遺産分割
1 遺産分割とは
人が亡くなると、亡くなった人の遺産は、法定相続分にしたがって当然に分割されるものを除いて、亡くなった人の相続人が法定相続分の割合で共有することになります。
例えば、Aさんが死亡し、相続人が妻B、子C・D・Eのとき、相続分は、Bが2分の1、C・D・Eがそれぞれ6分の1ということになります。
Aさんの遺産が、不動産(土地・建物)、預貯金3000万円、現金500万円であれば、これらの遺産はB、C、D、Eの共有状態となります。
- 【遺産】
- ・不動産(土地・建物)
- ・預貯金3000万円
- ・現金500万円
しかし、この遺産共有状態は、あくまで一次的・暫定的な状態です。
このような一次的・暫定的な状態から、遺産を構成している個々の財産がそれぞれの相続人へ帰属することが確定するためには、遺産分割の手続が必要となるのです。
2 遺産分割の対象
遺産分割の対象となるのは、遺産分割時の相続財産です。
相続開始時(死亡時)の相続財産ではありません。
3 遺産分割の当事者
共同相続人のほか、包括受遺者、相続分の譲受人です。
4 遺産分割の方法
遺産分割の方法には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があります。
- ① 現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法です。
先に掲げた例で、遺産に不動産、預貯金、現金があった場合、妻Bには不動産と現金を、子C、D、Eには預貯金をそれぞれ取得させるのがこれにあたります。 - ② 代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させた上、他の相続人に対する債務を負担させる方法です。
先に掲げた例で、遺産が不動産、現金のみで預貯金がなかったとした場合、妻Bが不動産と現金を取得する代わりに、妻Bが子C、D、Eに対してそれぞれ1000万円ずつ支払うとするのがこれにあたります。代償分割のためには、債務を負担する相続人(この例では妻B)に支払能力が必要です。 - ③ 換価分割とは、遺産を売却してその売却代金を分割する方法です。
先に掲げた例で、遺産が不動産しかなかったとした場合に、その不動産を売却して売却代金を相続人B、C、D、Eで分けるのがこれにあたります。 - ④ 共有分割とは、遺産を相続分に応じた共有として遺産分割としてしまうことです。
先に掲げた例で、遺産が不動産しかなかったとした場合に、その不動産を相続人B、C、D、Eの共有とするのがこれにあたります。
5 遺産分割手続の進め方
遺産分割をどのような方法で行うかについては、①協議分割(遺産分割協議)、② 調停分割(遺産分割調停)、③審判分割(遺産分割審判)があります。
手続は、①→②→③と進んで行くのが通常です。
- ① 協議分割(遺産分割協議)は、相続当事者の合意による遺産分割の手続です。
裁判外の合意によるもので、協議分割をするにあたっては、遺産に属する個別の財産について自由に分割の合意をすることができます。
協議が成立したら遺産分割協議書を作成するのが通常です。
遺産の分割について遺産分割の当事者間で話合いがつかない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停又は遺産分割審判の手続を利用することができます。 - ② 調停分割(遺産分割調停)は、相続当事者のうちの1人もしくは何人かが他の相続人当事者全員を相手方として申し立てるものです。
申し立てをすることができる人は、共同相続人、包括受遺者、相続分の譲受人で、申立先の裁判所は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所となります。
遺産分割調停手続では,裁判所が、当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料等の提出を受け、遺産について鑑定を行うなどして、事情をよく把握したうえで、解決案の提示や解決のための助言を行うなどして、話合いが進められます。調停は、話合いの手続になります。 - ③ 審判分割(遺産分割審判)は、遺産分割調停で話合いがまとまらず調停不成立となった場合に、自動的に審判手続が開始されるものです。遺産分割調停は不成立として終了しますが,引き続き遺産分割審判手続で必要な審理が行われた上,審判によって結論が示されることになります。
裁判官は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して、審判を行うことになります。
6 弁護士に頼めること
遺産分割に関して、弁護士に次のようなことを頼むことができます。
① 相談(出張相談)
遺産分割の内容や方法について、法律的な側面や過去の事例から、どのようなことができるのか、どのような内容が妥当なのかを相談することができます。
また、対応方法について判断が難しい場合や相手方の主張が正しかどうかがわからないような場合に、対応方法や解決案についてアドバイスを受けることができます。
当事務所では、出張相談にも対応しています。
② 遺産分割協議書の作成
遺産分割の当事者間で遺産分割について合意ができたら、合意内容を遺産分割協議書という形で書面に残しておくべきです。
遺産分割協議書は、遺産分割協議が成立したこととその内容を証する証拠になるとともに、遺産分割協議後の名義移転等の手続にも使われることがありますので、合意内容が正確に表現できているかどうか、法的効力を有するものとして有効に作成されているかどうかが重要です。
弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼することができます。
③ 遺産分割協議の代理人
相続人間の人間関係などにより遺産分割協議を自分で進めることが難しい場合、遺産分割協議がなかなかまとまらない場合、遺産分割協議を自分で進めていくのが心配な場合などには、弁護士に遺産分割協議の代理人を依頼することができます。
この場合、弁護士が窓口になって代理交渉をします。
弁護士に依頼することにより直接相手方と話をする必要がなくなり、感情的な障壁が軽減されたり、主張に法的な根拠付けができるなど、解決しやすくなるケースがあります。
④ 遺産分割調停の代理人
遺産分割調停はご自分で申立をすることもできますが、弁護士を代理人として申立をしたり、途中から弁護士を代理人に選任して調停手続を進めることも可能です。
遺産分割調停も裁判手続ですから、申立の際には、相続に関わる大量の戸籍などの書類を集めたり、遺産目録、相続関係図などを作成することが必要になってきます。手続は書面主義で進められ、自分の主張を根拠づける法律構成や資料の提出を求められることも多いです。さらに、裁判所から求められていることが理解できなかったり、納得が行かなかったり、反論ができなかったりして、対応に苦慮することもあります。
弁護士に代理人を依頼することにより、弁護士が裁判所に出頭して、一緒に対応し、弁護士から意見を述べてもらうこと、裁判所へ提出する書類については弁護士に作成してもらうことができ、安心して調停手続を進めることができ、自分の主張を裁判所により強く訴えることが可能になります。
⑤ 遺産分割審判の代理人
遺産分割の審判は、裁判官が当事者の主張内容や提出された資料を判断の基礎にして遺産分割の方法を決める手続です。訴訟類似の手続であり、自分の望む遺産分割方法を実現するには、効果的に法的な主張をして、主張の裏付けとなる資料を提出することが重要です。このような専門的な対応には、法律、裁判手続のプロである弁護士に依頼する必要性が高いと言えます。
7 遺産分割手続を弁護士に依頼するメリット
① トラブルを事前に予防し、円満な解決へ
弁護士を活用することにより、直接話合いをすることが困難な相手方と交渉することができ、また、相手方との感情的な対立を軽減することが可能となります。さらに、法的な観点や過去の事例からの妥当性も掴むことができるので、遺産分割をめぐるトラブルを予防し、または最小限に食い止め、熾烈な相続争いに発展することを防ぐことが可能となります。
② 確実な遺産分割協議書を作成することができる
法的な観点から正確かつ有効な遺産分割協議書の作成をしてもらうことができます。
③ 自分の主張を最大限に代弁してもらう
相続をめぐる紛争においては、自分の主張をいくら相手方に伝えても、相手方に受け入れてもらえない場合が多いと思います。このような場合に、自分の主張が法律的に正当なものであることを法律のプロである弁護士に最大限代弁してもらい、遺産分割が有利な方向へ進むよう代理人活動をしてもらうことができます。
④ 遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判も安心して進められる
弁護士が代理人として対応すれば、法律構成を考えることはもちろん、書面やそれを裏付ける資料の作成・提出も弁護士が行います。
手続を自分一人で進めて行くことには大きな不安がつきまといますが、弁護士を代理人に立てることにより安心して手続を進めることができ、法律的な観点からより有利に手続を進めることが可能となります。
8 遺産分割手続の弁護士費用(料金表)
【相談料】
30分 5500円(消費税込)
初回(30分)は無料
出張相談の場合
出張相談にも対応可能です。
相談料のほかに、移動時間30分につき出張日当5500円(消費税込)
【弁護士費用】
- 遺産分割協議書作成
- 11万円(消費税込)~
- 遺産分割協議、調停、審判の代理
着手金11万円(消費税込)~
通常の民事事件の場合に準じます。
着手金・報酬金の計算をご覧下さい。
その他については、個別にお問い合わせください。
※上記の金額には事件処理のための実費(印紙、郵券、交通費、通信費、謄写費用、鑑定費用など)は含まれません。
※着手金・報酬金の計算(消費税込)
- 経済的利益が300万円以下の場合
- 着手金8.8%(消費税込) 報酬金17.6%(消費税込)
- 経済的利益が300万円超、3000万円以下の場合
- 着手金5.5%+9.9万円(消費税込) 報酬金11%+19.8万円(消費税込)
- 経済的利益が3,000万円超、3億円以下の場合
- 着手金3.3%+75.9万円(消費税込) 報酬金6.6%+151.8万円(消費税込)
- 経済的利益が3億円超の場合
- 着手金2.2%+405.9万円(消費税込) 報酬金4.4%+811.8万円(消費税込)
(備考)
弁護士費用の支払いにつきましては、事案の内容やご事情に応じて、当初の費用(着手金)の割合を少なくして解決時に報酬金でその分を精算する、事案の内容によって減額する、分割払いとする等、依頼者の方のご負担を考慮して柔軟に対応しておりますので、ご遠慮なくご相談ください。