さ行
再転相続
被相続人が死亡して相続(第1の相続)が開始した後、その相続人が相続の承認・放棄をしないまま熟慮期間内に死亡し、その相続人についての相続(第2の相続)が開始したため、第2の相続の相続人が第1の相続についての承認・放棄の選択をする地位も含めて第1の相続の相続人を相続すること(狭義の再転相続)。
第2の相続の相続人を再転相続人という。
第1の相続について相続人が相続を承認し(または単純承認の効果が生じ)た後、遺産分割未了の状態でその相続人の1人が死亡して第2の相続が開始することを再転相続という言葉で指す場合がある(広義の再転相続)。
死因贈与
贈与者の死亡によって効力が発生する贈与。
生前に契約を締結し、贈与者が死亡することを条件として効力が発生する契約である。
死因贈与には遺贈に関する規定が準用されるが(民法554条)、死因贈与は遺贈と異なって、①遺言に基づく要式行為ではないから遺言の方式に関する規定は準用されず、②契約であるから遺言能力に関する規定や遺贈の放棄・承認に関する規定も準用されない。
失踪宣告
従来の住所または居所を去った者(不在者)が生死不明となった場合に、一定の手続を経たうえで不在者が死亡したものとみなす制度。
失踪宣告は利害関係人が家庭裁判所に申立てをすることによってなされる。
①不在者の生死が7年間明らかでない場合の一般失踪(普通失踪)と、②戦争、船舶の沈没など死亡の原因となる聞きに遭遇した者の静止がその危難の去った後1年間明らかでない場合の特別失踪(危難失踪)とがある。
受遺者
遺贈によって相続財産を与えられた者。
自然人に限られず法人でもよい。
受遺者は遺言の効力が発生した時点で生存・存在している必要があるため、受遺者が遺言の効力発生以前に死亡したときは遺贈は無効となる。
受贈者
贈与契約により財産等を与えられる者。
贈与契約が成立するためには、贈与者(財産等を与える者)の贈与の意思表示だけでなく、受贈者(財産等を与えられる者)の承諾が必要である。
準確定申告
死亡した人(被相続人)の相続人(包括受遺者を含む。)が、1月1日から死亡日までの被相続人の確定した所得金額及び税額を計算し、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行うこと。
準確定申告書には、各相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入した準確定申告書の付表を添付し、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出する。
審判
裁判所が、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果等種々の資料に基づいて判断し決定をすること、またはその決定のこと。
家庭裁判所で行う家事審判事件には、家事事件手続法別表第1に掲げる事項に関する事件(別表第1事件)と家事事件手続法別表第2に掲げる事項に関する事件(別表第2事件)とがある。
別表第1事件
子の氏の変更許可、相続放棄、名の変更の許可、後見人の選任、養子縁組の許可など、公益に関わるもの。
家庭裁判所が国家の後見的な立場から関与するもので、当事者が対立して争う性質の事件ではないことから当事者間の合意による解決ではなく審判がなされる。
別表第2事件
親権者の変更,養育料の請求,婚姻費用の分担,遺産分割など、当事者間に争いのある事件。
当事者間の話合いによる自主的な解決が期待されることから、通常は、まず調停として申し立てられ、話合いによる調停不成立となった場合に審判手続に移行する。当事者がいきなり審判を申し立てても裁判所がまず話合いによって解決を図る方がよいと判断した場合には調停による解決を試みることもできることになっている(付調停)。
審判結果に不服があるときは、2週間以内に不服の申立てをすることができる。
審判分割
家庭裁判所の遺産分割審判による遺産分割をいう。
遺産分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人はその分割を、相続開始地を管轄する家庭裁判所に請求することができる。
申立ての相手方は他の共同相続人全員である。
家庭裁判所での遺産分割調停が開始され、調停が成立しなかったときは、調停申立時に審判の申立があったものとみなされる。
審判分割では、具体的相続分に即した共同相続人の均衡を考慮して、相続分に従った分割がなされる。
数次相続
被相続人の相続が開始した後、遺産分割がなされないうちに相続人の1人が死亡して次の相続が発生すること。
例えば、父親の相続について相続人である母親と子供たちとの間での遺産分割協議がなされないうちに、母親が死亡して母親の相続が開始した場合がこれにあたる。
このような相続が2回以上重なる場合を数次相続という。
裾分け遺贈
受遺者が遺言によって与えられた財産上の利益の一部を第三者に分け与える義務を負う内容の遺贈。負担付遺贈の一種。
相次相続控除
相続開始前10年以内に、被相続人が相続等によって財産を取得して相続税が課されていた場合、その被相続人から相続等によって財産を取得した相続人の相続税の負担が過重とならないように相続税額から一定の金額を控除する制度。
例えば、祖父から父親への相続(1次相続)で父親が財産を取得して相続税が課税された場合、祖父の死亡から10年以内に父親が死亡して父親の相続(2次相続)が開始し、子が財産を取得して相続税が課される場合がこれにあたる。
1次相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額が2次相続の相続税額から控除される。
相続
人の死亡を原因として財産上の地位を承継させること。
相続される人を被相続人、相続する人を相続人といい、被相続人に属していた権利義務が包括して相続人に承継される。
相続税
個人が被相続人から相続または遺贈などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金。
相続税は、それぞれの相続人や受遺者などが納税義務者となり、それぞれが取得した財産の額を基準に課税されるものであり、その引当てとなるのは相続財産に限られない。
相続人
被相続人の相続財産を包括的に承継することができる一般的資格を持つ者。
相続人の種類と範囲は民法により画一的に定められており、配偶者相続人と血族相続人(第1順位は子、第2順位は直系尊属、第3順位は兄弟姉妹)とがある。
相続人の不存在
「相続人のあることが明らかでない」場合であり、①相続人が戸籍上存在しない場合
①相続人全員が相続放棄をしたり、相続欠格や廃除によって相続資格を失っている場合がある。「相続人のあることが明らかでない」場合、相続財産は相続財産法人となり、相続財産法人の財産管理人として、利害関係人または検察官の請求によって、相続開始地を管轄する家庭裁判所により相続財産管理人が選任される。
相続分
共同相続人が相続財産に対して有する持分支配の割合。
被相続人は遺言で相続分の指定をしたり指定を第三者に委託することができる(指定相続分)。被相続人による相続分の指定がない場合には、民法の定める相続分が適用される(法定相続分)。
相続欠格
遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿するなど、法の定める欠格事由に該当した場合に、当然に相続権を失う制度。
推定相続人の廃除とともに、相続資格が剥奪される制度。
相続財産管理人
次のようないくつかの場合がある。
1 相続人の存在・不存在が明らかでない場合(民法第951条、第952条第1項)
相続人の存在・不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)に、利害関係人等の請求によって家庭裁判所が法人とされた相続財産の管理を行うために選任する者(民法第951条、第952条第1項)。
この場合、相続財産は法人とされ、相続財産管理人は、相続財産の換価、相続債権者に対する相続債務の弁済を行うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させる。
特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もある。
2 相続財産の保存に必要な処分として選任される場合(民法918条第2項)
家庭裁判所が、利害関係人又は検察官の請求により、相続財産の保存に必要な処分を命ずる場合に相続財産を管理するために選任される者(民法918条第2項)。
具体例としては、後見事件において、被後見人の死後、相続財産を相続人へ引き渡すことができない場合、後見人であった者が、利害関係のある者として相続財産管理人選任申立を行い、相続財産管理人へ相続財産を引き継ぐ場合がある。
3 限定承認をした場合(民法第936条)
相続人が限定承認した場合で、相続人が数人ある場合には、家庭裁判所により、相続人の中から、相続財産の管理をするために選任される者(民法第936条第1項)。
4 財産分離の請求があった場合(民法第943条第1項)
財産分離の請求があったときに、家庭裁判所が、相続財産の管理について必要な処分を命ずる場合に相続財産を管理するために選任される者(民法943条第1項)。
相続分の譲渡
相続人が、遺産全体に対する包括的持分や法律上の地位を譲渡すること。
相続分の譲渡によって遺産全体に対する割合的持分が譲受人に移転し、相続分全部の譲渡の場合は、譲渡人は遺産分割手続から離脱する。譲受人が第三者である場合は遺産分割手続に新たに参加することになる。
相続分の放棄
相続人が、その相続分を放棄すること。
相続分の放棄をすることにより遺産分割手続から離脱する。
相続放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものと扱われるのに対し、相続分の放棄をした者は、相続人の地位を失うことはなく、相続債務に対する責任を負う。
相続放棄
相続人が相続開始による包括承継の効果を全面的に拒否する意思表示。
相続をするかどうかについては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、相続人に選択をする自由が認められている。