財産管理・死後事務
1 財産管理・死後事務に関する委任契約はどのように利用できるか
身の回りに親しい親戚がおらず、将来、認知症などで判断能力が衰えたときや自分が死亡した後のことを、遠い親戚ではなく、それよりも身近な知人や誰か信頼できる人に頼みたいという場合があると思います。
医療や介護の問題だけでなく、財産管理、住まいの問題、悪徳商法や詐欺の被害を未然に防ぐ、事業承継、遺言などによる死後の財産承継、葬儀・供養などの死後事務など、高齢期に生じる問題は多岐にわたります。
- ・自分に何かあったときにサポートを受けられるよう備えをしておきたい
- ・医療や介護サービスをきちんと受けられるだろうか
- ・預貯金や賃貸している不動産の管理を自分でできるか不安がある
- ・悪徳商法や詐欺の被害にあわないだろうか
- ・自分の事業を後継者に円滑に引き継がせたい
- ・死後の財産の承継を揉めないようにきちんと決めておきたい
- ・自分の葬儀や供養などをあらかじめ頼んでおきたい
財産管理・死後事務に関する委任契約は、これらの課題を解決し、認知症などで判断能力が衰えても困らないで生活をしていくうえでのサポートをするものです。ホームロイヤー契約と呼ばれることもあります。
2 財産管理・死後事務等に関わる委任契約の内容
時間的な経過に対応するイメージは以下のとおりです。
- (1)見守り契約
- 一定の頻度(1か月から2か月に1回程度)の面談、電話、メール、FAXなどによって依頼者の安否や生活状況を定期的に確認すること(安否確認)、日常生活や財産管理等に関する法律相談を行うことを内容とします。
- 対象としては、以下のような場合が想定されています。
- ①判断能力はまだしっかりしていて自分で財産管理をすることに問題はないけれども、自分に何かあったときにサポートを受けられるよう備えをしておきたい
- ②判断能力はまだあるけれども、自分一人で財産を管理するのが不安になってきた
②の場合は、財産管理契約とセットで契約する場合もあります。
見守り契約を締結して継続的に安否確認や法律相談を行うことによって、本人の状態が確認でき、受任者との信頼関係が築かれれば、判断能力が衰えて保護を必要とする状態になる前に、財産管理契約、任意後見契約や死後事務委任契約の締結、遺言書の作成などで将来に対する備えを行っておくことが可能となります。
- (2)財産管理契約
- 受任者が、預貯金通帳・印鑑、有価証券その他の重要書類の保管、預貯金の入出金、賃貸不動産の管理や賃料の受取りを行うなど、代理人として本人の財産の管理をすることを内容とした契約です。
財産管理の委任をする対象については、財産の全体とすることも、その一部を選択して対象とすることも可能であり、後に変更や追加をすることも可能です。また、代理権が与えられていても、一定の行為については、本人の同意が必要であることを定めておくこともできます。
財産管理を開始する時期については、契約後にすぐに開始する場合と一定の時点から(例えば、保護を必要とする状態になった時点から)開始する場合とが考えられますが、いずれの場合でもあらかじめ契約で定めておくことが可能です。
財産管理契約は、本人の判断能力の低下がなくても利用することが可能であり、任意後見契約と異なり公正証書を作成することは必要ありません。ただ、判断能力が衰えた後は、任意後見に移行できるように任意後見契約とセットで契約を結んでおくことも可能で、その場合は公正証書を作成することが必要になります。
財産管理契約と見守り契約、任意後見契約をセットで締結しておくと、その時々の本人の状態に応じた継続的、有機的な財産管理を行うことが可能となります。また、その間に、事業継承、遺言による死後の財産承継や死後事務の委任など、将来に対する備えも可能となります。
- (3)任意後見契約
- 判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ公正証書による委任契約を任意後見人となる人と締結して、その権限の内容を定めておき、判断能力が衰えた場合に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで契約の効力を生じさせるものです。
本人がまだ判断能力のある時に公正証書を作成して委任契約を結び、判断能力が衰えた後に任意後見人となるべき人を決めておくとともに、その代理権の範囲をあらかじめ決めておくものです。
任意後見人は、公正証書で定められた代理権の範囲で本人の財産を管理する権限を持つことになります。
家庭裁判所が任意後見契約の効力を生じさせることができるのは、本人の判断能力が少なくとも補助に該当する程度以上に不十分な場合です。
任意後見契約(公正証書)でいったん定めた代理権の範囲は変更することができません。これらを変更するためには、すでに結んだ任意後見契約を解除したうえで、新たに公正証書で任意後見契約を結ぶことが必要です。
また、任意後見契約を結ぶ際に、あらかじめ死後事務についてもあわせて委任しておくことも可能です。<//dd> - (4)死後事務委任契約
- 生前に、受任者との間で、死亡した後の諸手続、例えば、葬儀、納骨、埋葬などに関する事務等についての代理権を与えて死後の事務を委任する契約を結んでおき、それを本人が死亡した後に、受任者に行ってもらうことを内容とします。
- 委任する事務の内容の例としては、以下のようなものがあげられます。
- ・通夜、告別式、納骨、埋葬、菩提寺の選定、墓石建立、永代供養など
- ・医療費、税金、賃料、施設利用料など各種の支払い
- ・自宅や老人ホームの契約関係の処理
- ・役所への各種届けなどの手続
任意後見契約の内容には死後の事務を委任することは当然には含まれませんから、任意後見人に死後の事務についても頼みたいということであれば、任意後見契約と死後事務委任契約をセットで結んでおくと判断能力を喪失した後、任意後見の事務から死後の事務まで円滑に進めてもらうことができます。
また、任意後見契約だけでなく、判断能力が衰えて任意後見が開始される前の見守り契約(安否確認や法律相談など)や財産管理契約、死後の遺産の処理や相続に関する遺言書の作成などを加えると、ほぼすべての場面をカバーできるメニューとなります。
- (5)遺言
- 遺言とは、遺言者が生前に行った相手方のない単独の意思表示で、これについて遺言者の死後に法律的な効力が認められてその実現が確保されるものです。遺言者が生涯をかけて築き、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示で、遺言者が自らその残した財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止しようとするものです。
以下のような場合は、遺言をしておく必要性が高いといえます。
- ・夫婦の間に子供がいない場合
- ・内縁関係の場合
- ・再婚をしており、先妻との間に子がいる場合
- ・長男の妻や孫に財産を分けてあげたい場合
- ・個人で事業や農業を経営している場合
- ・相続人ごとに承継させたい財産を指定したい場合
- ・法定相続分とは違う割合で財産承継をさせたい場合
- ・法定相続人がいない場合
遺言は、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、厳格な方式が定められており、方式違反の遺言はすべて無効となってしまいます。
遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの方式が定められています。
遺言は、満15歳以上になればいつでもできますが、判断能力がなくなってしまうと有効な遺言を残すことができなくってしまいます。遺言をしないうちに判断能力がなくなったり、死亡してしまってからでは、自分の意思で財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止することも叶わなくなってしまいます。遺言は、判断能力がしっかりした元気なうちに、将来の備えとしてしておくべきものです。
見守り契約、財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約などとともに、遺言書の作成を行っておくと、継続的な財産管理と将来に対する備えを有機的に行うことが可能となります。
3 弁護士に頼めることと弁護士に依頼するメリット
弁護士に対して、見守り契約、財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言書の作成・遺言執行者の就任を頼むことができます。
これらの事務を弁護士に頼むことによって、以下のようなメリットがあります。
- ・どのようなことでもいつでも気軽に相談できる。
- ・困りごとの相談や見守りを受けたり、人生のラストステージについて相談するなど、寄り添った身近なサービスを受けることができる。
- ・日常的に行わなければならない様々な事務のサポートを代理人としてしてもらうことができる。
- ・トラブルに巻き込まれたり、緊急事態が発生した時も、弁護士に代理人として対応、解決してもらうことができる。
- ・自分に判断能力がなくなった後の財産管理や介護に関することをあらかじめ頼んでおくことができる。
- ・自分が死んだ後の事務の対応をあらかじめ頼んでおくことができる。
見守り契約(安否確認、法律相談など)、財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約(葬儀、埋葬など)、遺言者の作成・遺言執行者への就任の全部または一部をセットで特定の信頼できる弁護士に依頼することも可能です(ホームロイヤーと言われています)。
まずは、法律相談を受けるなどして、信頼できる弁護士かどうかを見極めてから、その後、具体的に依頼するかどうかを検討されるとよいと思います。
4 弁護士費用(料金表)
【相談料】
30分 5500円(消費税込)
初回(30分)は無料
出張相談の場合
出張相談にも対応可能です。
相談料のほかに、移動時間30分につき出張日当5500円(消費税込)
【弁護士費用】
- 見守り契約
- 月額5500円(消費税込)~
安否確認・法律相談の頻度、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 財産管理契約
- 月額2.2万円(消費税込)~
管理する財産の額、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 任意後見契約
- 公正証書文案作成費用
- 11万円(消費税込)~
- 任意後見人報酬
- 月額2.2万円(消費税込)~
資産の額、職務の内容等に応じて協議により定める額
- 死後事務委任契約
- 11万円(消費税込)~
職務の内容等に応じて協議により定める額
- 遺言書の作成
- 22万円(消費税込)~
定型的なものか、遺産の額、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 遺言執行費用
- 33万円(消費税込)~
遺産の額、不動産の売却があるか、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
遺言執行に裁判手続を要する場合は、別途裁判手続に要する弁護士費用がかかります。
その他については、個別にお問い合わせください。
※上記の金額には事件処理のための実費(印紙、郵券、交通費、通信費、謄写費用、鑑定費用など)は含まれません。
(備考)
弁護士費用の支払いにつきましては、事案の内容やご事情に応じて、分割払いとする等、依頼者の方のご負担を考慮して柔軟に対応しておりますので、ご遠慮なくご相談ください。