祭祀承継
1 祭祀財産とは
相続が発生したときには、葬儀やお墓をどうするかという問題が生じます。
系譜、祭具、墳墓といった祖先祭具等の祭祀財産については、相続財産を構成せず、祖先の祭祀を主宰すべきものが承継するものとされています。
- ① 系譜とは、家系図などをいいます。
- ② 祭具とは、位牌、仏壇、神棚、十字架など、祭祀や礼拝に使用されるものをいいます。
- ③ 墳墓とは、墓石、墓碑、埋棺など、遺体や遺骨を葬っている設備をいい、墓地使用権は「墳墓」と一体視すべきと解されています。遺骨については、既に墳墓に納められているものは墳墓と一体として扱われます。
2 祭祀財産の承継者(祭祀主宰者)
- (1)祭祀財産は、遺産分割の対象とはなりません。
- 祭祀財産は、相続財産を構成せず、祖先の祭祀の主宰者に帰属します。
したがって、相続分、遺留分、特別受益等の問題は起こらず、承認や放棄の制度もありません。 - (2)祭祀財産の承継者は、法律上は、以下の順序により決められるものとされています。
- ① 被相続人の指定
- ② 慣習
- ③ 家庭裁判所の審判
- 家庭裁判所の審判では、祭祀承継者を決定する判断要素として、お墓の掃除をしているのは誰か、仏壇や位牌は誰が持っているか、永代供養料は誰が支払ったか、お寺は誰を檀家・門徒と見ているかなどの事実を確認することがあります。
これ以外に、関係する当事者の協議によって祭祀承継者を決めることも認められるべきです。
祭祀財産を分割して複数の者が承継することも認められます。
- (3)遺産分割とは別個の審判事件
- 祭祀財産の問題は、遺産分割とは別個の審判事件となります。
したがって、祭祀財産の承継者の指定は、本来、遺産分割事件とは別途の申立てが必要ですが、当事者全員で合意ができるときは、遺産分割手続の中で祭祀承継者を指定して祭祀財産を承継させることにより調停を成立させることが可能です。
3 遺骨の問題
遺骨については、判例は、慣習上の祭祀主宰者に遺骨が帰属するとしています。
調停においては、分骨について協議が行われることもありますが、各自の意向を聴取して誰が取得するのが相当かを協議することになります。
4 葬儀費用
- (1)葬儀費用の負担者
- 葬儀費用とは、通夜、告別式、火葬等の家庭で要する費用をいいますが、葬儀費用の負担者を誰と考えるかについては、以下のような考え方があります。
- ① 喪主を負担者とする考え方
- ② 相続財産の負担とする考え方
- ③ 相続人に法定相続分に応じて分割承継されるとの考え方
- 葬儀費用の負担者を誰と考えるかについては、裁判例においても見解が分かれている問題です。したがって、何の問題もなく遺産から支払われると考えるべきではありません。
- (2)遺産分割手続での取扱い
- 葬儀費用は相続開始後に生じた債務であり、相続財産に関する費用とも言えないため、遺産分割の対象とはなりません。
その分担や支出金額について争いがある場合は、遺産分割協議や遺産分割調停で話合いをすることは可能です。例えば、相続人間で合意して、遺産分割協議や遺産分割調停において、香典でカバーできない葬儀費用を相続財産から差し引いて遺産分割を行うことは可能です。
しかし、これらで解決することができない場合は、民事訴訟手続で解決されるべきことになります(遺産分割審判の対象とすることはできません。)。 - (3)税務上の取扱い
- 相続税についての取扱いにおいては、相続財産の価額から被相続人に係る葬式費用を控除した価額につき、相続税が課税されるとされています。
- (4)香典
- 香典は、死者への弔意、遺族へのなぐさめ、葬儀費用など遺族の経済的負担の軽減などを目的とする祭祀主宰者や遺族への贈与です。
遺産分割の対象とはなりません。
香典については、慣習上、香典返しにあてられる部分を控除した残額は、葬儀費用にあてられます。 - (5)相続人がいない被相続人の葬儀費用の支出
死亡した人に法定相続人がおらず、法定相続人でない親族や近所で付き合いのあった人が葬儀をしたり、納骨、永代供養などを行い、それらの祭祀法事を執り行うための費用を支払うことがあります。親族関係が疎遠になり、いわゆるおひとりさまと呼ばれる単身者や独居老人が増えている現状では、このような事例は今後も増えていくと思われます。
死亡した人に遺産がないのであればまだしも、遺産がある場合には、これらの費用を支払った人は、実費だけでも遺産から支払って欲しいと思うでしょう。このような場合、どのようにしたらよいでしょうか。
結論を言いますと、死亡した人に法定相続人がいるかどうか明らかでない場合、その遺産は相続財産法人となり、相続財産管理人が相続財産を管理することになります。そして、現在の家庭裁判所の実務の運用では、被相続人と祭祀法事を執り行った人との関係、被相続人の生前の意思、相続財産の額、祭祀法事の内容、そのために必要とされる費用の額、近隣地域の社会通念等を考慮して、社会的に相当と認められる額については、相続財産管理人が、家庭裁判所に権限外行為の許可という方法で祭祀法事費用の相続財産からの支出の許可を受けて、相続財産から払い出すという運用がとられています。
したがって、祭祀法事費用を支払った人としては、まずは、利害関係人として家庭裁判所へ相続財産管理人の選任申立を行うべきこととなります。
5 生前の対策について
先祖代々のお墓が遠方にあるなどの理由で無縁墓になるケースが増えているようです。背景には、少子高齢化や核家族化を背景とした先祖に対する意識の変化があると考えられますが、そもそもお墓をみていた人が相続人のいないまま死亡したために、無縁墓となってしまったというケースも増えてきているように思います。
ご自分の死後にこのような事態になることを避けるため、相続人がおらず、祭祀承継の適任者がみつからないような場合は、あらかじめ生前に、改葬等の手続を含めたいわゆる「墓じまい」を納得の行く方法・内容で行っておくことも重要な選択肢の一つになってきます。
お墓の問題だけでなく葬儀の段階からの問題も含めて、被相続人が生前に自らの葬儀、法要、祭祀等について、第三者に対して委託している場合には、葬儀、法要、祭祀等に関する死後事務処理の委任契約として、その効力が認められることが可能です。
また、祭祀承継者の選択についてあてがある場合には、葬儀、埋葬方法、お墓の承継などについて、遺言書を作成して盛り込んでおき、死後の祭祀承継等が円滑に行われるよう手当をしておくことも考えられます。
6 弁護士に頼めることと弁護士に依頼するメリット
祭祀承継者の決定に関する手続(遺産分割協議や遺産分割調停での話合い、祭祀承継の決定に関する審判申立)、葬儀費用の負担についての手続(遺産分割協議や遺産分割調停での話合い、民事訴訟)、相続人がいない場合の葬儀費用の支出についての手続(相続財産管理人の選任申立)、葬儀や祭祀承継に関する生前の対策(死後事務委任契約など)などについて、専門家である弁護士に手続を依頼することができます。
また、弁護士に遺産分割の手続を依頼すると、葬儀費用の負担や祭祀承継の問題の解決についても、同時並行で対応してもらうことが可能となります。
7 弁護士費用(料金表)
【相談料】
30分 5500円(消費税込)
初回(30分)は無料
出張相談の場合
出張相談にも対応可能です。
相談料のほかに、移動時間30分につき出張日当5500円(消費税込)
【弁護士費用】
- 遺産分割手続等を受任する場合の祭祀承継に関する費用は、通常は遺産分割手続等の弁護士費用に含まれます。
- 遺産分割協議書作成
- 11万円(消費税込)~
- 遺産分割協議、調停、審判の代理
着手金11万円(消費税込)~
通常の民事事件の場合に準じます。
着手金・報酬金の計算をご覧下さい。- 遺留分減殺請求
着手金11万円(消費税込)~
通常の民事事件の場合に準じます。
着手金・報酬金の計算をご覧下さい。- 遺言書の作成
- 22万円(消費税込)~
定型的なものか、遺産の額、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 遺言執行費用
- 33万円(消費税込)~
遺産の額、不動産の売却があるか、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
遺言執行に裁判手続を要する場合は、別途裁判手続に要する弁護士費用がかかります。
- 相続放棄
- 11万円(消費税込)
- 限定承認
- 33万円(消費税込)~
遺産・負債の額、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 見守り契約
- 月額5500円(消費税込)~
安否確認・法律相談の頻度、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 財産管理契約
- 月額2.2万円(消費税込)~
管理する財産の額、複雑・特殊な事情があるか等に応じて協議により定める額
- 任意後見契約
- 公正証書文案作成費用
- 11万円(消費税込)~
- 任意後見人報酬
- 月額2.2万円(消費税込)~
資産の額、職務の内容等に応じて協議により定める額
- 死後事務委任契約
- 11万円(消費税込)~
職務の内容等に応じて協議により定める額
その他については、個別にお問い合わせください。
※上記の金額には事件処理のための実費(印紙、郵券、交通費、通信費、謄写費用、鑑定費用など)は含まれません。
※着手金・報酬金の計算(消費税込)
- 経済的利益が300万円以下の場合
- 着手金8.8%(消費税込) 報酬金17.6%(消費税込)
- 経済的利益が300万円超、3000万円以下の場合
- 着手金5.5%+9.9万円(消費税込) 報酬金11%+19.8万円(消費税込)
- 経済的利益が3000万円超、3億円以下の場合
- 着手金3.3%+75.9万円(消費税込) 報酬金6.6%+151.8万円(消費税込)
- 経済的利益が3億円超の場合
- 着手金2.2%+405.9万円(消費税込) 報酬金4.4%+811.8万円(消費税込)
(備考)
弁護士費用の支払いにつきましては、事案の内容やご事情に応じて、当初の費用(着手金)の割合を少なくして解決時に報酬金でその分を精算する、事案の内容によって減額する、分割払いとする等、依頼者の方のご負担を考慮して柔軟に対応しておりますので、ご遠慮なくご相談ください。