遺産分割
遺産分割の方法に優先順位はありますか
遺産分割の方法には、
①現物分割(相続財産を、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法)
②代償分割(一部の相続人に法定相続分を超えるなど遺産を多く取得させる代わりに、その相続人に他の相続人に対する債務を負担させる方法)
③換価分割(遺産を売却してその売却代金を分割する方法)
④共有分割(遺産を相続分に応じた共有として遺産分割とする方法)
があります。
遺産分割調停・審判では、家庭裁判所が、後見的立場から合目的的に裁量権を行使しつつ、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」(民法第906条)ことになりますが、遺産分割の方法については、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の順序で検討がなされます。
大阪高等裁判所平成14年6月5日決定(家月54巻11号60頁)は、
「遺産分割は、共有物分割と同様、相続によって生じた財産の共有・準共有状態を解消し、相続人の共有持分や準共有持分を、単独での財産権行使が可能な権利(所有権や金銭等)に還元することを目的とする手続であるから、遺産分割の方法の選択に関する基本原則は、当事者の意向を踏まえた上での現物分割であり、それが困難な場合には、現物分割に代わる手段として、当事者が代償金の負担を了解している限りにおいて代償分割が相当であり、代償分割すら困難な場合には換価分割がされるべきである。
共有とする分割方法は、やむを得ない次善の策として許される場合もないわけではないが、この方法は、そもそも遺産分割の目的と相反し、ただ紛争を先送りするだけで、何ら遺産に関する紛争の解決とならないことが予想されるから、現物分割や代償分割はもとより、換価分割さえも困難な状況があるときに選択されるべき分割方法である。」
としています。
実務上、遺産分割調停では、当事者が合意すればどのような分割方法をとることもほとんどの場合可能となりますが、遺産分割審判では、上記の優先順位で審判がなされるのが原則となりますが、当事者間で分割方法について意見が一致している場合は上記の優先順位よりも当事者間の意向を優先して分割方法の選択がなされることがあります。
(令和2年10月15日 弁護士菅野光明 記)