相続放棄・限定承認
限定承認をするには、限定承認の効果は
限定承認の方式-家庭裁判所での申述、受理審判、相続財産の清算手続
限定承認は、家庭裁判所への申述と家庭裁判所による限定承認申述の受理審判という形で行われます。
限定承認者(相続人が複数の場合は申述の受理と同時に選任される相続財産管理人)は、相続財産の清算手続を行わなければなりません。所定期間内(限定承認者の場合は5日以内、相続財産管理人の場合は選任後10日以内)に限定承認をしたこと及び債権の請求をすべき旨の公告(官報掲載)の手続を行ったうえ、法律にしたがい弁済・換価等の清算手続を行っていくことになります。
財産目録の作成・提出、共同相続人全員が共同して行うことが必要
限定承認の申述は、財産目録を作成して提出することが義務付けられています。
また、相続人が複数いる共同相続の場合は、共同相続人全員が共同して行う必要があります。一部の相続人だけで行うことはできません。もっとも、共同相続人の中に相続放棄をした者がいる場合、その者は初めから相続人ではなかったものとみなされるので、それ以外の共同相続人全員で申述することになります。
申述を行う家庭裁判所
限定承認の申述は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所に行います。
家庭裁判所は、調査をしたうえで申述を受理するかどうかを決定し、申述を受理したときは受理審判を下します。
申述に必要な書類
限定承認の申述書、財産目録のほか、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本に加えて、相続人と被相続人との関係に応じて必要な戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を取得して提出します。
同じ書類は1通で足り、同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件や相続放棄申述受理事件が先行している場合は、その事件で提出済みのものは改めて提出する必要はありません。
限定承認の効果
限定承認がされたときは、相続人の固有財産と相続した相続財産が分離して取り扱われ、相続により承継した債務について、相続人が相続財産を限度とする物的有限責任を負うことになります。
限定承認者・相続財産管理人による相続財産の管理
限定承認者は、自己の固有財産に対するのと同一の注意をもって、相続財産の管理をしなければなりません。
共同相続の場合は、家庭裁判所が、相続人の中から相続財産管理人を選任します。相続財産管理人に選任された相続人は、共同相続人のために、共同相続人に代わって相続財産の管理を行い、債務の弁済に必要な一切の行為を行う義務を負います。財産管理においては自己の固有財産に対するのと同一の注意で足ります。
限定承認における清算の手続
1 公告(官報掲載)・催告
限定承認者は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者と受遺者に対し、限定承認をしたこと及び2か月を下らない一定の期間内に「請求の申出」をすべき旨を公告しなければなりません。相続財産管理人の場合は、選任後10日以内に公告をしなければなりません。
この公告には、相続債権者や受遺者がその期間内に「請求の申出」をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければなりません。
また、限定承認者は、知れている相続債権者や受遺者には、各別に「請求の申出」の催告をしなければなりません。
2 公告期間中の弁済拒絶
限定承認者、相続財産管理人は、公告期間中は弁済を相続債権者、受遺者に対して弁済を拒絶することができます。
3 相続財産の換価
限定承認者、相続財産管理人は、相続債権者、受遺者に対する弁済をするために必要があるときは、法律にしたがって相続財産の換価を行います。
4 公告期間満了後の弁済
公告期間満了後、以下の順序でそれぞれの債権額の割合に応じて弁済を行います。
①優先権のある相続債権者
②公告期間内に「請求の申出」をした相続債権者、限定承認者または相続財産管理人に知れている相続債権者
③公告期間内に「請求の申出」をした受遺者、限定承認者または相続財産管理人に知れている受遺者
④公告期間内に申出をしなかった相続債権者・受遺者であって、限定承認者または相続財産管理人に知れなかった者
(令和2年1月13日 弁護士菅野光明 記)