特別縁故者に対する相続財産分与
特別縁故者に対する相続財産の分与とはどのような制度ですか
特別縁故者に対する相続財産の分与とは
相続人が存在しないことが確定して、相続財産管理人が相続債権者や受遺者への弁済や管理人報酬や管理費用の支払いをしてもまだ相続財産が残る場合に、被相続人と特別の縁故関係にあった人に対して、相続財産の全部または一部を与える制度です。
この制度は、もともとは、法律的な相続権のない内縁配偶者や事実上の養子などの保護を図ることを念頭に置いて設けられたものです。
相続人がおらず、遺言もないまま遺産を残して死亡した場合、利害関係人等の請求によって相続財産管理人が選任されると、遺産は最終的に国庫に帰属することになりますが、相続人がいないことが確定した場合の清算後の残余財産の枠内で、家庭裁判所の裁量により相続人以外の人に相続財産の分与が認められる制度です。縁故関係の具体的な内容・程度、相続財産の状況によっては、相当額の財産が分与されることもあります。
相続財産の分与を求めるには
特別縁故者に対する相続財産の分与を求めようとする場合は、自らを特別縁故者であると主張して、家庭裁判所へ相続財産分与の申立をしなければなりません。分与を求める人から申立をする必要があります。
申立は、相続開始地(被相続人の住所地)の家庭裁判所に行います。
申立期間は、相続人捜索の公告期間の満了からさらに3か月間です。具体的な期間については、官報公告で確認することができますが、被相続人の相続財産管理事件を担当している裁判所や相続財産管理人に問い合わせると回答をもらえると思います。
申立書(相続財産分与の審判申立書)には、被相続人との特別の縁故関係について記載し、それを裏付ける証拠資料(手紙、日記、写真など)の写しを添付する必要があります。
特別縁故者にあたるのはどのような人か
法律上は、特別縁故者にあたる者として、
①被相続人と生計を同じくしていた者
②被相続人の療養看護に努めた者
③その他被相続人と特別の縁故があった者
という3つの場合が定められていますが、①と②は例示であり、どのような者が特別縁故者にあたるかどうかは、個々の事案における裁判所の具体的判断に委ねられています。
相続財産の分与の審判
相続財産分与の申立があったときは、家庭裁判所からその旨が相続財産管理人に通知されます。
通知を受けた相続財産管理人は、申立人が特別縁故者にあたるかどうか、分与の相当性、分与の内容や程度などについて事実関係と理由を記載した意見書を作成し、家庭裁判所に提出します。その後、申立人からの意見書に対する反論、相続財産管理人からの再反論などを経て、家庭裁判所が申立期間が経過した後に、申立に対する審判を行います。
申立人が特別縁故者にあたる場合、家庭裁判所は分与を認めるのが相当かどうか、全部分与にするか、一部分与にするかを判断します。分与の判断は家庭裁判所の裁量に委ねられることになります。
(令和元年12月1日 弁護士菅野光明 記)