相続放棄・限定承認
相続放棄をするには、相続放棄の効果は
相続放棄の方式-家庭裁判所での申述と受理審判
相続放棄は、家庭裁判所への申述と家庭裁判所による相続放棄申述の受理審判という形で行われます。
申述を行う家庭裁判所
相続放棄の申述は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所に行います。
家庭裁判所は、申述者が相続人であるか、相続放棄の意思が真意によるものか、法定単純承認事由にあたる事実がないかなどを調査したうえで、申述を受理するかどうかを決定します。
家庭裁判所は、相続放棄の申述を受理したときは、受理審判を下します。
未成年者の相続放棄と利益相反行為
親権者と未成年者の利益が相反する場合や、複数の未成年者相互の利益が相反する場合は、親権者がそのまま未成年者の法定代理人として相続放棄の申述をすることはできず、特別代理人の選任を受けて相続放棄を行う必要があります。
申述に必要な書類
相続放棄の申述書のほか、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本に加えて、相続人と被相続人との関係に応じて必要な戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を取得して提出します。
同じ書類は1通で足り、同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件や相続放棄申述受理事件が先行している場合は、その事件で提出済みのものは改めて提出する必要はありません。
相続放棄の効果
1 遡及効
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
2 代襲相続との関係
相続放棄をした者の直系卑属がいても相続放棄をした者を代襲することはありません。
3 登記との関係
相続登記がされ、共有持分が差し押さえられた後に、相続放棄をした場合などが問題となります。
判例によると、相続放棄によってその相続人は相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位に置かれることになり、その効力は絶対的で、何人に対しても登記なくして対抗できるとされています。
4 詐害行為取消権との関係
判例によると、相続放棄のような身分行為については、詐害行為取消権行使の対象とはならないとされています。
5 相続放棄後の管理義務
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされますが、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないとされています。
(令和2年1月13日 弁護士菅野光明 記)