コラム | 東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

03‐3221‐3335

業務時間 9:00~17:30(平日)

(ご予約で)夜間・土日休日も相談対応可能

お問い合わせ
コラム画像

コラム

特別縁故関係があるとみられる人が死亡してしまった場合、その相続人は相続財産の分与を受けることができるか

特別縁故者に対する相続財産の分与

1 特別縁故関係があるとみられる人が死亡してしまった場合

特別縁故関係があるとみられる人が相続財産の分与を受ける前に死亡してしまう場合があり得ます。
このような場合、特別縁故関係があるとみられる人の相続人は、その地位を引き継いで相続財産の分与を受けることができるのでしょうか。
特別縁故者とみられる人が死亡した時点が、その人が相続財産の分与の申立をする前であったのか、それとも申立をした後であったのかによって、場合を分けて検討します。

2 相続財産の分与の申立をする前に特別縁故関係があるとみられる人が死亡した場合

特別縁故関係があるとみられる人が相続財産の分与の申立をする前に死亡した場合、その相続人が相続財産の分与の申立をすることはできるのでしょうか。

特別縁故者としての地位は一身専属的なものである等の理由で、否定的に考える、つまり、特別縁故関係があるとみられる人の相続人は相続財産の分与の申立をすることができないとするのが一般的です。実務上も否定説に基づいて運用されています。

東京高等裁判所平成16年3月1日決定(家月56巻12号110頁)は、
特別縁故者として相続財産の分与を受ける可能性のある者がその分与の申立をすることのないまま死亡した場合には特別縁故者としての地位が承継されることはないと解するのが相当である
として否定説に立っています。

その理由とするところは、以下のとおりです。
・被相続人の特別縁故者として相続財産の分与を受ける権利は、家庭裁判所における審判によって形成されるにすぎず、被相続人の特別縁故者として相続財産の分与を受ける可能性のある者も、審判前に相続財産に対し私法上の権利を有するものではない(最高裁平成6年10月13日判決・判例時報1558号27頁参照)。
・特別縁故者として相続財産分与の申立をするかどうかは一身専属的な地位に基づくものである。
・そうすると、特別縁故者として相続財産の分与を受ける可能性のある者も、現にその分与の申立をしていない以上、相続財産に対し私法上の権利を有するものではない。

加えて、この東京高等裁判所の決定は、
特別縁故者にあたると主張する人が、被相続人の特別縁故者として相続財産分与の申立をする目的で、その前提手続である相続財産管理人選任事件の申立をしていたとしても、直ちに特別縁故者ないしこれに準ずる者として相続財産に関し法律上保護すべき具体的な財産権上の地位を有するものではないというほかない
とも述べ、相続財産の分与の申立をしていない以上、相続財産の分与を受けるために相続財産管理人選任の申立をしていてもそれだけでは足りないとしています。

3 相続財産の分与の申立をした後に特別縁故関係があるとみられる人が死亡した場合

特別縁故関係があるとみられる人が相続財産の分与の申立をした後に死亡した場合、その相続人は相続財産の分与の申立人としての地位を承継することができるのでしょうか。

相続財産の分与を受ける権利は、申立がされたことによって具体化されて財産的性質を持つ期待権が生じてそれが相続性を有すること、否定説に立つと家庭裁判所での審理期間の違いによって分与の可否が左右され不公平が生じる可能性があることから、肯定的に解釈するのが多数で、実務上も肯定説に基づいて運用されています。

大阪高等裁判所平成4年6月5日決定(家月45巻3号49頁)は、
特別縁故関係があるとみられる人の死亡時期を申立前と申立後とに分けて次のように述べています。
(申立前)
特別縁故者の地位は、その者と被相続人との個人的な関係に基づくもので、財産分与の申立てをするか否かはその者の意思に委ねられていて、その意味で一身専属性の強い地位であるから、特別縁故者であったと考えられる者が分与の申立てをすることなく死亡したときは、その相続人がその地位を承継したとして分与の申立てをすることはできないと解すべきである。
(申立後)
しかしながら、その者が一旦分与の申立てをすれば、相続財産の分与を受けることが現実的に期待できる地位を得ることになり、その地位は財産的性格を持つものであるから、その後その者が死亡した場合、分与の申立人たる地位は相続性を帯び、その相続人はその地位を承継するものと解するのが相当である。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

その他のコラム

中小企業の経営権の承継と遺産分割方法の選択

事業承継

1 中小企業における株式の共同相続 中小規模の同族会社においては、会社の安定的な経営のため、遺産に株式がある場合、相続による株式の分散をできるだけ避けることが望ましいといえます。 共同相続の効力については、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条)とされています(株式の場合は所有権以外の財産であるため正確には準共有ですが(民法第264条)、以下、単に共有と...

続きを読む

異順位の相続資格重複が認められる場合の先順位相続資格喪失による他の相続資格への影響

相続人の範囲と調査

1 異順位の相続資格重複の場合 異順位の相続資格が重複する場合は、重複する資格を同時に主張することはできないため、先順位の相続資格のみ認められます。 そこで、先順位の相続資格において相続資格を喪失した場合(相続欠格、廃除、放棄)に、後順位の資格で相続ができるかが問題となります。 A、B、X3人の兄弟姉妹のうち、AとXが養子縁組をした場合、Aの相続に関して、Xは、養子としての相続資...

続きを読む

相続の承認・放棄の熟慮期間はいつから起算されるか

相続放棄・限定承認

1 相続の承認・放棄の熟慮期間 民法第915条第1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定しています。 他方で、同法第921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」とし、同条2号では「相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった...

続きを読む

共有不動産の分割方法~遺産共有の場合と夫婦共有の場合~

遺産分割

1 共有物分割請求 民法第258条は、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」としています。 遺産分割前の相続人間で共有状態にある不動産や夫婦が婚姻中に取得した共有名義の不動産を分割したい場合、この方法によることができるでしょうか。   2 遺産共有の場合 相続の場面で、遺産分割前の遺産共有の場合には、共有物分割請求が...

続きを読む

弁護士歴20年以上積み上げてきた経験実績
依頼者お一人お一人とじっくり向き合い、ていねいな説明
きめ細やかな対応が強みです