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特別縁故者に対する相続財産の分与~重婚的内縁配偶者と分与の相当性~

特別縁故者に対する相続財産の分与

1 特別縁故者の範囲と内縁配偶者

民法第958条の3第1項特別縁故者の範囲を以下のように定めています。
①被相続人と生計を同じくしていた者
②被相続人の療養看護に努めた者
③その他被相続人と特別の縁故があった者

このうちの①と②は例示であり、どのような者が特別縁故者にあたるかどうかは、個々の事案における裁判所の具体的判断に委ねられています。

特別縁故者に対する相続財産の分与制度の創設に際して内縁配偶者の保護がかなり強く意識されていたようですが、内縁配偶者は、上記①の「被相続人と生計を同じくしていた者」の典型例にあたります。
以下のような審判例があります。

岡山家庭裁判所昭和46年12月1日審判(家月25巻2号99頁)
「申立人は被相続人と生前その死亡直前まで内縁関係の夫婦として同棲生活を営んで生計を同じくしていたもので、いわゆる特別縁故者と認められるし且つ本件分与の申立も法定の期間内になされており、その上、他に同様の申立をしたものがないことは当裁判所に明らかである。
よつて申立人に対して特別縁故者として前記相続財産を分与するのが相当である」

2 重婚的内縁配偶者の場合の問題点~「分与の相当性」~

被相続人に法律上の配偶者がいる場合、つまり重婚的内縁関係の場合にも特別縁故者として相続財産の分与が認められるかという問題があります。
理論的には、特別縁故者に対する相続財産の分与が認められるためには、
「特別縁故の存在」と「分与の相当性」が必要であるとされ、
重婚的内縁関係の問題は、それが「分与の相当性」を否定する事情になるかどうかという問題です。

3 「分与の相当性」を否定した審判例

重婚的内縁関係にあった者については、公序良俗違反の関係にあった者に対する相続財産分与を行うことになり、公序良俗に反する法律状態の延長ないし継続を容認するに等しいとして、「分与の相当性」を否定した以下のような審判例もあります。

水戸家庭裁判所土浦支部昭和53年2月13日審判(家月30巻8号69頁)
「申立人は被相続人と約17年余りにわたつて同棲し死亡当時療養看護をなし、葬儀を喪主として行い、一応供養もしているので、民法第958条の3の被相続人と生計を同じくしていた者に形式的に該当しているものと云えないことはない」
「けれども、前認定のように、そもそも申立人と被相続人との関係は、法の認めない公序良俗に反する妾関係であつて、民法第90条及び家事審判法第1条の目的に副わないものであるのみならず、申立人は被相続人の俗にいうヒモ的存在であつたというべきであるから、申立人を民法第958条の3の特別縁故者として被相続人の遺産を分与することは、民法第90条家事審判法第1条の各目的に照し、結局前述の法に副わない法律状態の延長ないし、継続を認容するに等しく、上記法条に反すること明白なものと云わなくてはならない。」
「しかも、民法第958条の3は、必ず特別縁故者に相続財産を分与するとは定めておらず、相当と認めるときは相続財産の全部又は一部を与えることができると規定しており、この趣旨こそ、まさに、本件の如き場合に分与を否定する裁量的判断の基準に合致するものと解せられる。」

東京高等裁判所昭和56年4月28日決定(東京高等裁判所(民事)判決時報32巻4号103頁)
「被相続人と10数年にわたって男女関係を持ち、その間約4年間同棲し、死亡当時療養看護をなし、葬儀を喪主として行い、その供養もしているので、形式的には民法第958条の3の被相続人と生計を同じくしていた者に該当すると云えなくはないが、そもそも同人には法律上の妻・・・・があるため、被相続人とは重婚的内縁関係にあり、右は法の認めない公序良俗に反する妾関係であって、民法第90条および家事審判法第1条の目的に副わないものであり、前記特別の縁故は、上記関係から生じたものであるから同人を民法第958条の3の特別縁故者として被相続人の遺産を分与することは公序良俗に反する法律状態の延長ないし、継続を認容するに等しく、前記法条の目的に反するものと云わなくてはならない。」

4 重婚的内縁関係における「分与の相当性」判断

重婚的内縁関係にも、法律婚が破綻・形骸化しており、重婚的内縁関係の方が夫婦と同視しうるような実体を伴っており、かつその事実状態が長期間継続しているというような場合もあり得るので、重婚的内縁関係というレッテルで内容を顧みずに十把一絡げに、公序良俗に反するとして「分与の相当性」を一律に否定すべきではないと考えられます。
個々の事案ごとに、事実関係を詳しく調査して「分与の相当性」が判断されるべきものと思われます。
裁判実務も現在はそのような方向で運用されているとみられます。
審判例の中には、重婚的内縁関係にあったといえる者についても、特別縁故者と認めて、分与の相当性を否定せず、相続財産の一部分与を認めたものもあるようです。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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