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再転相続の場合における遺産分割手続~特別受益の考慮~

遺産分割

1 広義の再転相続

第1の相続について相続人が相続を承認し、または単純承認の効果が生じた後、その相続についての遺産分割未了の状態で、その相続人の1人が死亡して第2の相続が開始することを再転相続という言葉で指す場合があり、広義の再転相続といいます。

下の図の例で考えます。
【第1の相続】
被相続人  X
相続人   Y(Xの妻)
A(XYの長男)
B(XYの長女)
C(XYの二男)
【第2の相続】
被相続人  Y   Xから相続した遺産以外にY固有の遺産はないものとします
相続人   A(XYの長男)  Yから贈与(特別受益)を受けているものとします
B(XYの長女)
C(XYの二男)

2 第1の相続と第2の相続の一括処理

上記のような再転相続の場合、第1の相続と第2の相続を一括して処理するのが通常です。
この場合、第1の相続の相続人のうち、遺産分割前に死亡してしまった相続人(上記の例でいえばY)が取得すべきであった財産をどのように扱うかが問題となります。

3 未分割遺産に対する死亡した相続人の権利関係~遺産説と非遺産説

(1)遺産説
共同相続人が取得する未分割遺産に対する共有持分権は、物権法上の共有持分権と同様のものであり実体法上の権利性が認められるものであって、相続人が死亡した場合はその遺産を構成するという考え方です。
遺産説によれば、第2の相続の被相続人が第1の相続の未分割遺産について相続分に応じて取得した共有持分権は第2の被相続人の遺産を構成し、第2の相続における遺産分割の対象となります。

(2)非遺産説
共同相続人が取得する未分割遺産に対する権利(相続分)は、遺産分割の前提となる遺産を取得することができるという抽象的な法的地位であって、遺産分割の対象となり得る具体的な財産権ではないとする考え方です。
非遺産説によると、第2の相続の被相続人が第1の相続において取得した権利(相続分)は遺産分割手続によらずに当然に第2の相続の相続人へ承継されることとなります。

(3)最高裁判所平成17年10月11日決定(民集59巻8号2243頁)
次のように判示して遺産説をとることを明らかにしています。
「遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有の性質は、基本的には民法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではない(最高裁昭和28年(オ)第163号同30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁、最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁、最高裁昭和57年(オ)第184号同61年3月13日第一小法廷判決・民集40巻2号389頁参照)。そうすると、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となるというべきである。
本件におけるA及びBの各相続の経緯は、Aが死亡してその相続が開始し、次いで、Aの遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡してその相続が開始したというものである。そうすると、Bは、Aの相続の開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人である抗告人及び相手方らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要があ」る。

この最高裁判所決定の原審である大阪高等裁判所平成17年2月28日決定(民集59巻8号2252頁)は、Bには、その相続開始時において遺産分割の対象となる固有の財産はなく、Aの遺産に対するBの相続分は、Aの遺産を取得することができるという抽象的な法的地位であって、遺産分割の対象となり得る具体的な財産権ではない、Bの相続分は、遺産分割手続を要せずして、Bの相続人である抗告人及び相手方らに民法900条所定の割合に応じて当然に承継されるとして非遺産説を採用していました。

(4)従前よりの家庭裁判所における実務
従前よりの家庭裁判所の実務の大勢は遺産説に立って処理されており、特に異論がなかったと思われます。
遺産説によれば、第1の相続の被相続人の未分割遺産についてまず分割を行い、続いて第2の相続の被相続人に帰属した財産について分割を行うということになります。

4 第2の相続で特別受益がある場合

遺産説によると、第2の相続の被相続人から特別受益を受けた相続人がいる場合には、その持戻しをして具体的相続分を算定する必要があります。
上記最高裁判所の決定も、「共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。」としています。
これに対して、非遺産説に立つ大阪高等裁判所の決定は、上記Bの相続分は、遺産分割手続を要せずして、Bの相続人である抗告人及び相手方らに民法900条所定の割合に応じて当然に承継され、遺産分割手続によらない承継には民法903条は適用されず、また、Bにはその相続開始時に遺産分割の対象となる固有の財産もないから、特別受益を考慮する場面はないとしていました。

5 第2の相続の遺産分割調停申立の要否

(1)第2の相続の被相続人に固有の遺産がなく、第2の相続における特別受益がない場合
この場合は、第2の相続については遺産分割調停を申し立てる必要はないとされています。
遺産説によっても非遺産説によっても第2の相続の相続人の最終的な具体的相続分は同じ割合になり違いは生じません。
第1の相続について遺産分割調停の申立があれば、第2の相続まで含めて計算された最終的な各相続人の具体的相続分割合をもとにして、第1の相続の被相続人の未分割遺産が分割されることとなります。

(2)第2の相続の被相続人に固有の遺産がある場合や第2の相続における特別受益がある場合
この場合は、第1の相続と第2の相続双方について遺産分割調停の申立が必要です。
第2の相続における遺産分割の対象には、第1の相続において第2の相続の被相続人が取得した遺産の共有持分が含まれることになります。

 

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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