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相続人の配偶者や子に対する贈与は特別受益として持戻しの対象となるか~間接受益者~

特別受益

1 特別受益者の相続分

特別受益者の相続分に関する民法第903条第1項は、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、」と規定しています。
つまり、特別受益者となるのは「共同相続人」とされています。

他方で、被相続人から相続人の配偶者、子などへ贈与がなされる場合も少なくないと思われます。
このような場合、相続人が、相続人の配偶者、子などを介して間接的に受益を得ているとみて(間接受益者)、相続人の特別受益として持戻しの対象となるかが問題となります。

2 間接受益者についての裁判例

裁判例としては、以下のものがあります。

(1)肯定した裁判例

①相続人の配偶者に対する贈与の場合
福島家庭裁判所白河支部昭和55年5月24日審判(家月33巻4号75頁)
本件贈与は、相続人に対してではなく、その夫に対してなされているのであるから、形式的に見る限り特別受益にはあたらないことになるとしながら、
「しかし、通常配偶者の一方に贈与がなされれば、他の配偶者もこれにより多かれ少なかれ利益を受けるのであり、場合によつては、直接の贈与を受けたのと異ならないこともありうる。遺産分割にあたつては、当事者の実質的な公平を図ることが重要であることは言うまでもないところ右のような場合、形式的に贈与の当事者でないという理由で、相続人のうちある者が受けている利益を無視して遺産の分割を行うことは、相続人間の実質的な公平を害することになるのであつて、贈与の経緯、贈与された物の価値、性質これにより相続人の受けている利益などを考慮し、実質的には相続人に直接贈与されたのと異ならないと認められる場合には、たとえ相続人の配偶者に対してなされた贈与であつてもこれを相続人の特別受益とみて、遺産の分割をすべきである。」
として、本件贈与は直接相続人になされたのと実質的には異ならないと認定し、特別受益にあたると解するのが相当としています。

②相続人の子に対する贈与の場合
神戸家庭裁判所尼崎支部昭和47年12月28日審判(家月25巻8号65頁)
被相続人が子を残して家出したことがある相続人の子の大学在学中の学費や生活の一切を援助した事案について、被相続人は相続人の子の扶養義務者ではなかったから、これは被相続人から相続人の子に対する学費、生活費の贈与と見ることができるとしながら、
「共同相続人中のある相続人の子が被相続人から生計の資本として贈与を受けた場合において、そのことがその相続人が子に対する扶養義務を怠ったことに基因しているときは、実質的にはその相続人が被相続人から贈与を受けたのと選ぶところがないから、遺産分割に当っては民法903条を類推適用してその相続人の特別受益分とみなし、持戻義務を認めて相続分を算定するのが公平の見地からいって妥当である。」
として、相続人の特別受益を認めました。

(2)否定した裁判例
東京高等裁判所平成21年4月28日決定(家月62巻9号75頁)
「特別受益として持戻しの対象となるのは、共同相続人に対する贈与のみであるから、その親族に対して贈与があったことにより共同相続人が間接的に利益を得たとしても、これは特別受益には該当しないものであり、これが実質的に共同相続人に対する贈与に当たると認められる場合にのみ、当該相続人に対する特別受益となるものというべきである。」としたうえで、
本件では、被相続人からの相続人の子に対する養育費用の支払は、被相続人が現実に相続人の子を養育していたことにかんがみれば、実質的に相続人への生前贈与に当たると認めることはできず、特別受益として持戻しの対象とならないとしました。

3 間接受益者についての考え方

特別受益として持戻しの対象となるのは、条文に書かれているように共同相続人に対する贈与のみであり、その親族に対する贈与で共同相続人が間接的に利益を得たとしても共同相続人に対する贈与ではないため、特別受益には該当しないというのが原則となります。
しかし、その贈与が、贈与の経緯、贈与された金額、贈与により共同相続人が受けた利益等を考慮して、名義は配偶者や子に対する贈与であるものの、実質的に共同相続人に対する贈与に当たると評価できる例外的な場合は、その相続人に対する特別受益となると考えられます。

上記いずれの裁判例も、このような考え方で共通しているとみられますが、事案ごとのあてはめで結論を異にしています。

 

            【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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