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養子縁組と代襲相続

相続人の範囲と調査

1 民法第877条第2項

民法第877条第2項は、
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
と規定しています。
民法第891条は、相続人の欠格事由を定めた条文です。

 

2 代襲者が養子で被代襲者が相続権を失った場合

(1)被代襲者が相続権を失った時点よりも前に養子縁組をしていた子による代襲相続
以下の図1の場合で、民法第887条2項の規定から当然に代襲相続ができる場合です。

(2)被代襲者が相続権を失った時点よりも後に養子縁組をした子による代襲相続
以下の図2の場合です。
この場合も、養子は被代襲者の嫡出子であり(民法第727条、第809条)、被相続人の直系卑属ですから、民法第887条2項の規定の適用があり、代襲相続ができます。

 

3 被代襲者が養子で相続権を失った場合

(1)養子の子が養子と被相続人の養子縁組前に生まれている場合の代襲相続
以下の図3の場合です。

民法第887条第2項は、「相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」と規定しています。
つまり、①相続権を失った者の子は代襲相続人となるのが原則ですが、②被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人とはなれません。
これは、被相続人と血縁関係のない者を代襲相続人から排除するための規定です。
したがって、被相続人の養子となった者は養子縁組によって被相続人の嫡出子としての地位を取得しますが(民法第809条)、養子縁組前に生まれていた養子の子と養親である被相続人との間には血縁関係は生じないため、養子の子は代襲相続人としての資格を有しないことになります。

もっとも、大阪高等裁判所平成1年8月10日判決(高裁民集42巻2号287頁)は、
養親の実子と婚姻した養子との間に生まれた子が養子縁組前に生まれた子であっても、そのような子は養親の直系卑属であるから、養子の代襲者として養親の遺産につき相続権があるとしています。
この判決は、
「民法887条2項ただし書において、『被相続人の直系卑属でない者』を代襲相続人の範囲から排除した理由は、血統継続の思想を尊重するとともに、親族共同体的な観点から相続人の範囲を親族内の者に限定することが相当であると考えられたこと、とくに単身養子の場合において、縁組前の養子の子が他で生活していて養親とは何ら係わりがないにもかかわらず、これに代襲相続権を与えることは不合理であるからこれを排除する必要があったことによるものと思われる」
と民法第877条第2項の目的論的解釈を行いつつ、
本件の場合には、その母を通じて被相続人の直系の孫であるから右条項の文言上において直接に違反するものではなく、また、被相続人との家族生活の上においては何ら差異のなかった姉妹が、亡父と被相続人間の養子縁組届出の前に生れたか後に生れたかの一事によって、長女には相続権がなく二女にのみ相続権か生ずるとすることは極めて不合理であるから、衡平の観点からも、被相続人Aの遺産に関し代襲相続権があると解するのが相当である(ちなみに、本件のような事例において、戸籍先例は、縁組前の養子の子に代襲相続権を認めている。昭和35年8月5日民事甲第1997号民事局第二課長回答)
として代襲相続を認めています。
民法第877条第2項の立法趣旨を考慮し、養親(被相続人)の実子と婚姻した養子との間に生まれた子であり養親(被相続人)とは養親の実子を通して直系卑属にあたるという事実、二人の姉妹につき生まれた時期がたまたま養子縁組の前後であったという事実のみにより取扱いを異にするのは極めて不合理であるという考慮によって、上記のような判断しているものです。

(2)養子の子が養子と被相続人の養子縁組後に生まれた場合の代襲相続
以下の図4の場合です。

被相続人の養子となった者は養子縁組によって被相続人の嫡出子としての地位を取得します(民法第809条)。
養子縁組後に生まれた子は、既に被相続人の嫡出子となっていた養子に生まれた子であるため、被相続人の直系卑属となります。
したがって、民法第877条第2項の要件をみたし、養子の子は代襲相続人となる資格を有することになります。

 

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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