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相続財産(遺産)の不動産にかかる固定資産税、火災保険料、賃料などを相続財産(遺産)から支払うことができるか

遺産の範囲と調査

1 遺産分割前の共有遺産の管理に要する費用

被相続人が死亡した後、共同相続人のうちの1人が、例えば、遺産に属する不動産の固定資産税を支払ったりしながら、遺産分割までの間、遺産を管理している場合があります。このような場合、共同相続人のうちの1人が遺産の管理のために支払った費用は後日、遺産から支払われるのでしょうか。

これに関する条文としては民法第885条があり、それによれば「相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。」と規定されています。
ここにいう「相続財産に関する費用」とは、相続財産の管理や清算に必要な一切の費用のことを意味し、以下のようなものがその例です。
(1)相続の承認・放棄の熟慮期間中に相続人が相続財産管理のために支出した費用
(2)相続放棄後の財産管理に要する費用
(3)限定承認、財産分離、相続人不存在の場合における相続財産の管理・清算に必要な費用
(4)遺言執行者の報酬
(5)遺産分割前の共同相続財産の管理(民法第898条、第252条)に要する費用

 

2 遺産分割前の共同相続財産の管理(民法第898条、第252条)に要する費用

「相続財産に関する費用」として認めている例として、以下のような裁判例があります。

(1)土地建物の固定資産税、借地料、電気料金、水道料金、火災保険料、下水道使用料
大阪高等裁判所昭和41年7月1日決定(家月19巻2号71頁)は、これらの費用は相続財産の管理に必要な費用であり、相続財産に関する費用として相続財産から支弁すべきものであるから、分割すべき相続財産およびその収益の額を算定するにあたっては、当然これらのような管理の費用を控除しなければならないとしています。

(2)借地の賃料、建物の増改築修繕費、公租公課
東京高等裁判所昭和54年3月29日決定(家月31巻9号21頁)は、これらの遺産分割までの遺産の管理費用については、民法第885条の規定が適用されるべきものと解するのが相当であり、遺産が分割されるときには、特別の事情がない限り、これに付随するものとして同時に清算することができるものと解するのが相当であるとしています。

(3)固定資産税、土地改良費、建物・畑の管理費
東京高等裁判所昭和54年6月6日決定(家月32巻3号101頁・判例時報937号42頁)は、これは、民法第885条第1項、第259条第1項により第1次的には相続財産の負担に帰し遺産分割の際考慮の対象とすべきであるとしています。

 

3 遺産分割手続において清算することができるか

もっとも、遺産分割前の共同相続財産の管理に要する費用を遺産分割手続において清算することができるかについては、実務上必ずしも上記の裁判例のように肯定されているわけではないと思います。

大阪高等裁判所昭和58年6月20日決定(判例タイムズ506号186頁)は、固定資産税などの「相続財産の管理費用」は、その相続分に応じて共同相続人が負担すべきもので、仮に相続人の1人が他の相続人のために相続債務や相続財産の管理費用を立て替え支払ったとしても、その償還請求権は遺産分割とは別途に行使すべきであるとしています。

これによれば、遺産分割手続とは別に民事訴訟で解決することになります。

なお、これに関連して、最高裁判所平成17年9月8日判決(民集59巻7号1931頁)が次のように判示しています。
「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」

遺産分割手続において「相続財産の管理費用」を清算できないとすると、遺産を分ける制度である遺産分割審判においては、当事者間で合意しても「相続財産の管理費用」の清算を遺産分割審判の対象とすることはできないことになります。

もっとも、その場合でも、遺産分割調停において当事者間の合意で「相続財産の管理費用」の清算を含めて遺産分割調停を行うことは可能です。

 

      【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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