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共有不動産の分割方法~遺産共有の場合と夫婦共有の場合~

遺産分割

1 共有物分割請求

民法第258条は、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」としています。
遺産分割前の相続人間で共有状態にある不動産や夫婦が婚姻中に取得した共有名義の不動産を分割したい場合、この方法によることができるでしょうか。

 

2 遺産共有の場合

相続の場面で、遺産分割前の遺産共有の場合には、共有物分割請求が許されず遺産分割の審判手続によらなければならないとされているのは確定した最高裁判例です。

最高裁判所昭和62年9月4日判決(裁判集民事151号645頁、家月40巻1号16等)は、
「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」
としています。

上記の最高裁判所判決の原審(高松高等裁判所昭和59年2月29日判決(家月40巻1号167頁)、松山地方裁判所西条支部昭和58年1月28日判決(家月40巻1号172頁))は、遺産共有の場合に共有物分割請求が認められない理由として、以下の点をあげています。
①遺産の分割は民法第907条第2項等により家庭裁判所の審判によるべきである。
②遺産分割を共有物分割請求でなし得るとすると、分割の結果につき民法第909条本文(遺産分割の遡及効)の適用を認め得ないこととなるので、相続財産の分割を被相続人からの伝来取得とみる法の立場に反する結果となる。
③民法第259条により一部の遺産を自由に個々に分割し得るとすることは、相続人の1人の分割の訴え提起により残余の遺産の分割を困難ならしめて、全体の遺産をどのように分割するかの全体的配慮ができなくなり、かなりの弊害が予測される。
④遺産分割は民法第903条の特別受益あるいは同第904条の2の寄与分の協議審判等を考慮して分割されるべきであるところ、公開対審構造の地方裁判所において調査官の調査等もなくこれを配分し得るものとは考えられない。

原審は、これらの理由をあげて遺産分割請求の管轄は家庭裁判所に専属するとしています。
ここでは、親族間の従前の経過や関係を種々考慮しながら、しかも全体を見ながら個別の遺産の帰属・分割方法に配慮する必要がある遺産分割手続については、家庭裁判所の調査官の行う調査等の手段がない地方裁判所の判決手続(当事者の主張や当事者が提出してきた証拠に基づいて裁判所が判断を下すという審理が行われる)によって妥当な結論を導くことは不可能であるという判断、配慮があるということがわかります。

 

3 夫婦共有の場合

夫婦共有の場合で、夫婦関係が悪化して別居するなどして一方がその不動産を処分したいという意向を持つことがあり得ますが、このような場合、離婚に伴う財産分与の手続を経ないと、不動産の分割、処分はできないのでしょうか。

この点について、通常の共有関係の解消を定めている共有物分割請求によることを認めた判例があります。
この点について詳しく判示しているのは、東京地方裁判所平成20年11月18日中間判決(判例タイムズ1297号307頁)ですが、夫婦の共有関係の処理は遺産分割の場合と異なると述べています。
この判決の理由は、おおまかにいえば以下のようなものです。

遺産分割の場合に共有物分割請求が許されないとされる前提には、
①相続分が法律上明確に定められており、共同相続人の範囲に争いのない限り、相続分の割合は一義的に明らかであり、
②相続財産の範囲に争いがある場合は遺産確認の訴えによってその範囲を後日争えないように確定する手段がある。
このような前提があるからこそ、相続財産の共有の場合に、遺産分割審判のみを認め、共有物分割請求を認めなくても、権利義務関係の確定の見地から、格別、不都合を生じることはない。

これに対して、財産分与の場合には、①分与の割合についてそのように確定する手段が無く、②分与の対象についても争いになった場合にそのように確定する手段が確立しているとも言い難い、したがって、共有物分割請求を認めることによって、①共有持分の割合と、②その前提となる分割の対象について後日争えないように確定できるようにすることが必要である。
そうすると、夫婦の共有財産について、共有物分割請求を認めずに、財産分与請求のみを認めることは、共有物の分割を希望する者に不都合を生じさせるといわざるを得ない。

非常に理論的な理由でわかりにくいですが、簡単にいえば、①分ける割合と、②分ける対象について、後に争いを許さないような形で確定する手段が離婚に伴う財産分与にはないので、それを共有物分割請求という方法で確定する必要があるということです。

さらに、上記の東京地方裁判所の中間判決は、共有物分割請求を認めるべきとする根拠として、以下の点をあげています。
(ⅰ)財産分与の場合には、対象となる夫婦共同の財産が夫婦の共有名義ではなく、どちらか一方の単独名義となっていることも珍しくなく、このような事案については共有物分割を論じる余地はなく、専ら財産分与請求をするしかないのであって、その意味においても財産分与請求と共有物分割請求はそれぞれが想定する場面を共通にするものでもないので、遺産分割について共有物分割請求が許されず、遺産分割の審判手続によるものとする最高裁判所の判例は、夫婦の共有財産の分割については、妥当しないというべきである。

(ⅱ)夫婦の中には、一方の側からの離婚請求が、有責配偶者であること等の理由から排斥される事案もあり、たとえこのような事案であっても、夫婦の共有名義となっている財産の共有物分割の途が閉ざされるべき理由はないところ、仮に被告主張のような前提に立てば、共有物分割の途が完全に閉ざされ、不当な結果となる(もとより、個別の事案によっては、共有物分割請求が権利の濫用として排斥される可能性はあるが、およそ夫婦財産の清算は財産分与請求によるべきであって、共有物分割請求が許されないと解することはできない。)。

(ⅲ)夫婦の共有財産といえども、その取得の時期、財源、経緯等の事情から、財産分与の対象とならないものもある。

なお、注意すべきは、上記の東京地方裁判所の中間判決も、「対象となる夫婦共同の財産が夫婦の共有名義でなく、どちらか一方の単独名義となっていることも珍しくない。このような事案については共有物分割を論じる余地はなく、専ら財産分与請求をするしかない」と述べていることです。つまり、形式上名義が共有になっていなければ、共有物分割請求はできないとしていることです。

別の判例で、大阪高等裁判所平成17年6月9日判決(判例時報1938号80頁)は、夫婦の実質的共有財産についてその分割方法については、他の夫婦の実質的共有財産と併せて離婚の際の財産分与手続に委ねるのが適切であることは否定できないとしつつ、「夫婦の実質的共有財産ではあっても、民法上の共有の形式を採っている以上、共有物分割を含む、民法の共有関係の諸規定の適用を一切廃除しなければならないとまでは認め難い」として、理屈としては共有物分割請求という方法を用いることができると述べています。

結論的には上記の東京地裁判決と同じことを述べていますが、どちらの方法を取るのが適切であるかについては、若干の温度差があるように感じます。
この判決は、理屈としては、夫婦の実質的共有財産についてその分割方法につき、共有物分割請求という方法を用いることができると述べていますが、その裁判の結論としては、別の理屈(本事案のもとでは夫婦の生活状況等も考慮して、夫から妻に対する共有物分割請求が権利の濫用にあたるという認定)で共有物分割請求を否定しています。

 

                     【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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