異順位の相続資格重複~先順位の相続資格喪失による影響 |東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

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異順位の相続資格重複~先順位の相続資格喪失による影響

相続人の範囲と調査

1 異順位の相続資格重複の場合

異順位の相続資格が重複する場合は、重複する資格を同時に主張することはできないため、先順位の相続資格のみ認められます。
そこで、先順位の相続資格において相続資格を喪失した場合(相続欠格、廃除、放棄)に、後順位の資格で相続ができるかが問題となります。

A、B、X3人の兄弟姉妹のうち、AとXが養子縁組をした場合、Aの相続に関して、Xは、養子としての相続資格と兄弟姉妹としての相続資格という異順位の相続資格を有しています。
この例で検討したいと思います。

 

2 相続放棄の場合

考え方として以下のものがあります。
(1)肯定説
二重の相続資格を有する者が相続放棄をした場合、当該放棄は1つの相続資格に基づいてされたと見て、養子としての相続資格と別個独立の兄弟姉妹としての相続資格を肯定する考え方です。
同一人が先順位の相続人たる資格において相続の放棄をした場合でも当然には後順位の資格による相続放棄の効力を生じないとする裁判例があります(京都地方裁判所昭和34年6月16日判決(下民集10巻6号1267頁、家月12巻9号182頁))。

(2)否定説
二重の相続資格を有する者が相続放棄をした場合、当該放棄は2つの相続資格に基づいてされたと見て、養子としての相続資格と別個独立の兄弟姉妹としての相続資格を否定する考え方です。
先例(昭和32年1月10日民事甲第61号民事局長回答)は、兄弟姉妹としての相続資格を否定しています。
相続放棄は、相続債務を免れる目的で専ら利用されるので、先順位の相続人としての資格において相続を放棄しながら、後順位の相続資格が残存しているとしたり、相続財務を免れるには2度相続放棄をするというのも迂遠であり、相続放棄をすることは、相続人としての地位を離脱することを意味すると考える見解です。

(3)折衷説
相続放棄をした者の意思解釈の問題として、放棄者が後順位の相続資格を排斥する趣旨の意思表示をしないかぎり、後順位の相続放棄の効力も生じるとする考え方で、近時、有力になっています。
原則として、養子としての相続放棄には、兄弟姉妹としての相続放棄の意思が含まれているとしつつ、例外的に、兄弟姉妹としての相続放棄を含まない意思が表示されていれば、兄弟姉妹としての相続資格を肯定するという見解です。

 

3 相続欠格の場合

Xに相続欠格事由(民法第891条)があり、XがAの相続人となることができない場合、XはAの養子の地位においても、Aの兄弟姉妹の地位のいずれにおいても相続権を失うことになります。
これは先順位での欠格の効果が後順位の相続資格に及ぶということではなく、同一の非行がいずれの相続資格においても欠格事由となることによるものです。

 

4 廃除の場合

AがXを廃除した場合(民法第892条、第893条)にも相続欠格の場合と同様の問題が生じます。
廃除によりすべての相続資格が剥奪されるという見解が多数です。

 

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

監修

菅野綜合法律事務所

弁護士 菅野光明第二東京弁護士会所属

弁護士歴20年超える経験の中で、遺産分割、遺言、遺留分、相続放棄、特別縁故者に対する相続財産分与など相続関係、財産管理、事業承継など多数の案件に携わってきた。事案に応じたオーダーメイドのていねいな対応で、個々の案件ごとの最適な解決を目指す。

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