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配偶者居住権の活用による相続税におけるメリット

相続税

新しい年(2020年)を迎えてほぼ1週間が経過しました。
平成30年の相続法関係法令の改正により設けられた新しい制度のうち、本年(2020年)中に施行を予定されているのが以下の制度です。
4月1日  配偶者居住権(配偶者が自宅に住み続けられる権利)
7月10日 遺言書保管法(自筆証書遺言の法務局での保管)

このうち、配偶者居住権については、本来の制度趣旨による活用はもちろんのこと、その活用による税務上のメリットにも注目がされているところです。

配偶者居住権を取得した配偶者が死亡した場合の課税関係については、令和元年7月8日に国税庁から通達が出され、その取扱いが明確になりました。
以下、通達の内容です。

相続税法基本通達 第9条《その他の利益の享受》関係

(配偶者居住権が合意等により消滅した場合)
9-13の2 配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9-13の2において「建物等所有者」という。)が、対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として、当該建物等所有者が、その消滅直前に、当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加)

(注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。

この通達によると、配偶者居住権が消滅した場合、消滅の原因に応じて、課税関係は以下の取扱いになります。
1 消滅原因が以下の場合、建物所有者または敷地の所有者に対して贈与税が課税されます。ただし、適正な対価が支払われている場合は除かれます。
①配偶者と建物所有者との合意
②配偶者による放棄
③建物所有者による消滅請求
2 消滅原因が以下の場合は課税は発生しません。
①配偶者居住権の存続期間の満了
②配偶者の死亡
③建物の全部消失等

このように、配偶者居住権を取得した配偶者が亡くなった場合には課税は発生しないため、これによって次のような相続税におけるメリットが考えられます。

例として、夫が被相続人、自宅の評価が3000万円、配偶者居住権が1500万円の場合を考えます。
配偶者居住権を設定せずに自宅を妻が取得した場合、配偶者は3000万円の自宅を取得します。夫から妻への相続については、配偶者控除(配偶者には1億6000円または法定相続分まで控除が受けられる)を活用すれば相続税がかからずに自宅を承継することができる場合がありますが、二次相続(妻から子への相続)の段階まで考慮した場合、配偶者居住権を設定しておくことによって二次相続の段階での相続税の負担軽減を得ることができます。
①配偶者居住権を設定しなかった場合は、二次相続の段階で、3000万円の自宅が子に相続され、その分、相続税が課される可能性があります。
これに対して、
②配偶者居住権を設定していた場合は、一時相続の段階で子に1500万円分の相続税が課税される可能性はありますが、二次相続の段階では子に課税されることはなくなります。

相続対策を検討する際には、法律的な面だけでなく税務面にも配慮すること、現在の問題だけでなく将来のこと(二次相続)をも視野に入れた考慮と判断が必要です。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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