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遺留分減殺(遺留分侵害額)の請求の相手方

遺留分

遺留分減殺(遺留分侵害額)請求を行う際に、誰を相手方とするか迷う場合があると思います。

例えば、以下のような場合で、Bが遺留分減殺(遺留分侵害額)請求を行う場合です。
(相続人) 
A、B、C、Dの4名でいずれも被相続人の子
(遺産の額)
8000万円
単純化のため遺留分の計算はこの8000万円を基準とすることとします。
(遺贈)
Aに4000万円
Bは取得分無し
Cに500万円
Dに3500万円

Bの遺留分は1000万円(1/4×1/2×8000万円)ですが、Cの遺留分も1000万円であり、Cが遺贈を受けた額は遺留分に満たない額です。
Bが遺留分減殺(遺留分侵害額)請求を行うにあたりCも相手方にすべきかが問題となります。

この問題に関しては、以下の点が問題となります。
1 相続人が遺贈等によって取得した財産の価額が遺留分に満たない場合、その相続人は遺留分減殺(遺留分侵害額)請求の相手方となるのか。
2 遺留分減殺(遺留分侵害額)請求の相手方が複数いる場合、次のいずれの方法により減殺を受ける(遺留分侵害額の負担額を算定する)か。
(1)遺贈等の全額の割合に応じて算定する考え方
(2)遺贈等から遺留分額を控除した残額に割合に応じて算定する考え方(遺留分超過額説)

平成30年の相続法改正前の規律に関しては、改正前の民法1034条で「遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する」とだけ規定されていたのですが、最高裁判所の判例(最高裁判所平成10年2月26日判決・民集52巻1号274頁)があり、上記の遺留分超過額説をとり、自己の遺留分額を超えて遺贈等を受けている相続人(上記の例でいえば、AとD)を相手方として遺留分減殺請求をすれば良いという解釈がされていました。

以下、判例の引用です。
相続人に対する遺贈が遺留分減殺の対象となる場合においては、右遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが、民法1034条にいう目的の価額に当たるものというべきである。ただし、右の場合には受遺者も遺留分を有するものであるところ、遺贈の全額が減殺の対象となるものとすると減殺を受けた受遺者の遺留分が侵害されることが起こり得るが、このような結果は遺留分制度の趣旨に反すると考えられるからである。そして、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言による当該遺産の相続が遺留分減殺の対象となる場合においても、以上と同様に解すべきである。

これに対して、平成30年の相続法改正により、遺留分超過額説を取ることで、この点の規律が明文化され、条文上も解決が図られました
遺留分超過額説は、受遺者や受贈者が相続人である場合は、その相続人にも最低限の取り分としてその相続人の有する遺留分を確保する必要があり、遺留分超過額説を取らないと求償の循環を生じることなどを考慮したものであると言われています。

以下、条文(民法第1047条1項)の引用です。
(受遺者又は受贈者の負担額)
第1047条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

最後に、設例へのあてはめですが、遺留分超過額説によると、AとDの負担額は以下のとおりとなります。

Aの遺留分超過額=4000万円-1000万円=3000万円
Dの遺留分超過額=3500万円-1000万円=2500万円

Aの負担額=Bの遺留分額1000万円×3000万円÷(3000万円+2500万円)
=545万円
Dの負担額=Bの遺留分額1000万円×2500万円÷(3000万円+2500万円)
=455万円

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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