相続資格が重複する場合の相続分 |東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

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相続資格が重複する場合の相続分

相続人の範囲と調査

【相続資格が重複する場合の例】

上の図のように祖父Aと孫の甲とが養子縁組をした場合を例として考えます。

1 Bが死亡の場合(Bを被相続人とする相続)

甲の父Bが死亡した場合の相続について、甲は、
①Bの子としての資格
②Bの兄弟(養子による兄弟)としての資格
をあわせて持つことになります。

(縁組による親族関係の発生)
第七百二十七条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

もっとも、この場合は、異順位の相続資格が重複する場合であり、甲は①(子としての相続資格)と②(兄弟としての相続資格)を同時に主張することはないから、先順位の①の相続資格のみが認められることになります。

2 Bが先に死亡しており、その後Aが死亡した場合(Aを被相続人とする相続)

甲の父Bが先に死亡しており、その後、甲の祖父Aが死亡した場合の相続について、甲は、
①Aの子Bの代襲相続人としての資格
②Aの子(養子)としての資格
を持ち、同順位の相続資格が重複することになります。
重複する相続資格が両立可能であれば、相続資格の重複を認めるのが多数の見解ですが、判例はありません。
戸籍先例(昭和26年9月18日民事甲第1881号民事局長電報回答)は、相続資格の重複を肯定しています。

以下のような少し複雑な例を考えてみます。
なお、BはAの弟ですが、Aと妻との間にしばらく子がなかったため、将来の家の財産の承継のことを考えて、弟のBと養子縁組をしました。また、図の中にある番号(①や②など)はそれらが発生した順序を示しており、Aの両親はいずれもAとBの養子縁組よりも前に死亡しているものとします。

1 Aの相続について

法定相続人は、配偶者が先に死亡しておりいないため、子3名(実子甲と乙、養子B)となります。
法定相続分は各3分の1ずつ
各法定相続人は遺留分を有し、個別的遺留分割合は各6分の1(法定相続分の2分の1)

2 Bの相続について

配偶者、直系卑属、直系尊属がいないため、法定相続人は、Bの兄弟姉妹となります。
甲と乙はいずれも、
①Bの兄弟姉妹Aの代襲相続人としての資格
②Bの兄弟姉妹(BはAの養子)としての資格
を持ち、同順位の相続資格が重複することになります。
重複する相続資格が両立可能である場合に相続資格の重複を認める多数の見解や戸籍先例(昭和26年9月18日民事甲第1881号民事局長電報回答)の考え方によりますと、以下のようになります。
・兄弟姉妹甲の法定相続分(資格②) 4分の1
・兄弟姉妹乙の法定相続分(資格②) 4分の1
・兄弟姉妹Aの法定相続分4分の1の代襲相続分(資格①)として、甲が8分の1、乙が8分の1
・兄弟姉妹Cの法定相続分4分の1の代襲相続分として、丙が8分の1、丁が8分の1
⇒甲が8分の3、乙が8分の3、丙が8分の1、丁が8分の1

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

監修

菅野綜合法律事務所

弁護士 菅野光明第二東京弁護士会所属

弁護士歴20年超える経験の中で、遺産分割、遺言、遺留分、相続放棄、特別縁故者に対する相続財産分与など相続関係、財産管理、事業承継など多数の案件に携わってきた。事案に応じたオーダーメイドのていねいな対応で、個々の案件ごとの最適な解決を目指す。

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