法務局における遺言書の保管制度 |東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

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法務局における遺言書の保管制度

遺言

平成30年7月6日に成立した民法改正と同時に、法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)が成立し(同月13日公布)、法務局という公的機関で遺言書を保管する制度ができました。法務局における遺言書の保管及び情報の管理に関して必要な事項については、法務局における遺言書の保管等に関する政令(令和元年12月11日公布)が定められています。

この制度は、令和2(2020)年7月10日から施行されますが、この制度が新たに設けられた背景は以下のとおりです。
自筆証書遺言が自宅(仏壇・金庫等)で保管されることが多いことから、遺言書の紛失、廃棄、隠匿、改ざんなどが生じるおそれ、または行われるおそれがあるということがあり、これらを原因として相続をめぐる紛争が生じるおそれがあります。
そこで、法務局という公的な機関で自筆証書による遺言書を保管する制度を新たに設けることによって、相続をめぐる紛争の防止を図ることにしました。

制度の概要は以下のとおりです。

1 遺言書の保管の申請

保管の申請の対象となるのは、民法第968条の自筆証書遺言に係る遺言書のみであり(法第1条)、封のされていない法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません(法第4条第2項)。
遺言書の保管に関する事務は、法務局のうち法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)において、遺言書保管官として指定された法務事務官が取り扱います(法第2条、法第3条)。
保管の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対してすることができ(法第4条第3項)、申請は、遺言者が遺言書保管所に自ら出頭して行わなければなりません。
遺言書保管官は、申請人が本人であるかどうかの確認をします(法第4条第6項、法第5条)。遺言書保管官は、遺言書の保管の申請が遺言者以外の者によるものである場合等には、理由を付した決定により当該申請を却下します(法務局における遺言書の保管等に関する政令第2条)。

2 遺言書保管官による遺言書の保管及び情報の管理

保管の申請がされた遺言書については、遺言書保管官が、遺言書保管所の施設内において原本を保管するほか、画像情報等の遺言書に係る情報を管理します(法第6条第1項、法第7条第1項)。

3 遺言者の住所等の変更の届出

保管の申請をした遺言書が遺言書保管所に保管されている場合において、遺言者の住所等に変更が生じたときは、遺言者は、速やかにその旨を遺言書保管官に届出をしなければなりません(法務局における遺言書の保管等に関する政令第3条)。

4 遺言者による遺言書等の閲覧、保管の申請の撤回

遺言者は、遺言書保管官に対し、いつでも、保管されている遺言書や保管の申請をした遺言書に係る遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧を請求することができ(法第6条、法務局における遺言書の保管等に関する政令第4条)、また、保管の申請を撤回することができます(法第8条)。
保管の申請が撤回されると、遺言書保管官は、遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去します(法第8条第4項)。
遺言者の生存中、遺言者以外の者は遺言書の閲覧等を行うことはできません

5 遺言書の保管の有無の照会及び相続人等による証明書の請求等

何人も、自己が相続人、受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます(法第10条)。
遺言者の相続人、受遺者等は、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます(法第9条)。
遺言書保管官は、遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人、受遺者及び遺言執行者に通知します(法第9条第5項)。

6 遺言書等の保管期間

遺言書については遺言者の死亡日から50年
遺言書に係る情報については遺言者の死亡の日から150年
(法務局における遺言書の保管等に関する政令第5条第2項)。
遺言者の生死が明らかでない場合、遺言者の死亡した日は、出生の日から120年を経過した日とされます(法務局における遺言書の保管等に関する政令第5条第1項)。

7 遺言書の検認の適用除外

遺言書保管所に保管されている遺言書については、 遺言書の検認(民法第1004条第1項)が不要となります(法第11条)。

8 遺言書の保管申請書の閲覧

遺言者、遺言者が死亡している場合の相続人等は、特別の事由があるときは、遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請に係る申請書又はその添付書類等の閲覧の請求をすることができます(法務局における遺言書の保管等に関する政令第10条第1項乃至第4項)。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

監修

菅野綜合法律事務所

弁護士 菅野光明第二東京弁護士会所属

弁護士歴20年超える経験の中で、遺産分割、遺言、遺留分、相続放棄、特別縁故者に対する相続財産分与など相続関係、財産管理、事業承継など多数の案件に携わってきた。事案に応じたオーダーメイドのていねいな対応で、個々の案件ごとの最適な解決を目指す。

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