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相続放棄と相続分の放棄との違い

相続放棄・限定承認

1 相続放棄とは

相続人が相続開始による包括承継の効果を全面的に拒否する意思表示が相続放棄です。
相続放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものと扱われます(民法第939条)。相続人としての地位を当初より失うことになりますので、代襲相続も発生しません。
相続放棄を行うためには家庭裁判所での手続が必要です。相続放棄をしようとする相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対し、相続放棄の申述をしなければなりません(民法第915条第1項)。

2 相続分の放棄とは

相続人が、相続開始後に、その一方的意思表示により自己の相続分(相続財産に対する持分)を放棄することを相続分の放棄といいます。
相続分の放棄について明文の規定はなく、実務においては、民法第255条を類推適用し、遺産に対する共有持分権を放棄する意思表示と解されています。
相続分の放棄により、その相続人は相続人としての資格を失うことはありません相続債務の負担義務も免れないことになります。
相続分の放棄は、相続開始後、遺産分割が行われるまでの間、いつでもすることが可能であり、家庭裁判所への申述も不要で、方式は問われません。
なお、遺産分割調停・審判では、家事事件手続法(第258条、第43条)により、相続分の放棄をした相続人について当事者の地位を失わせるため、裁判所は職権で手続から排除することができます。

3 相続放棄をした場合と相続分の放棄をした場合の他の相続人の相続分の違い

以下の図のような事例において、相続放棄をした場合と相続分の放棄をした場合とで、相続放棄・相続分の放棄後の他の相続人の相続分を比較すると両者で違いが生じます。

(1)相続放棄の場合
相続放棄の場合、相続放棄をしたBは初めから相続人とならなかったことになるため、相続人は妻Yと子A及び子Cということになります。
したがって、子Bの相続放棄の結果、各相続人の相続分は、
妻Y  2分の1
子A  4分の1
子C  4分の1
となります。

相続債務1200万円についても上記の相続分で分割して承継されますので、債権者は、相続人それぞれに対して以下のように請求ができます。
妻Y  600万円(1200万円×1/2)
子A  300万円(1200万円×1/4)
子C  300万円(1200万円×1/4)

(2)相続分の放棄の場合
相続分の放棄の場合は、放棄をした相続人の相続分は、共有持分の放棄に関する民法第255条の類推適用により、他の相続人各々の相続分に応じて分配されることになります。
したがって、放棄者である子Bの相続分6分の1は、各相続人の法定相続分の割合に応じて、妻Yが1/2:子Aが1/6:子Cが1/6、つまり妻Yが3:子Aが1:子Cが1の割合で帰属することとなり、子Bの相続分6分の1は以下のように配分されます。
妻Y  1/6(Bの相続分)×3/5=1/10
子A  1/6(Bの相続分)×1/5=1/30
子C  1/6(Bの相続分)×1/5=1/30
これらを各相続人の元々の相続分と足すと、各相続人の相続分は以下のように変わり、相続放棄の場合と異なることとなります。
妻Y  1/2+1/10=3/5  5分の3
子A  1/6+1/30=1/5  5分の1
子C  1/6+1/30=1/5  5分の1

相続債務1200万円の承継については、相続分の放棄は影響を与えません。
したがって、債権者は、相続分の放棄をした子Bも含めて、相続人それぞれに対して以下のように請求ができます。
妻Y  600万円(1200万円×1/2)
子A  200万円(1200万円×1/6)
子B  200万円(1200万円×1/6)
子C  200万円(1200万円×1/6)

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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