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特別縁故者に対する相続財産分与~死亡後に葬儀や法要などを執り行った場合

特別縁故者に対する相続財産の分与

1 死後縁故と特別縁故者

法定相続人の中に被相続人の葬儀や法要などを行う人がいないため、被相続人の法定相続人ではないものの、自ら費用でそれらを執り行い、遺産を管理している人がいる場合があります。
このような人を特別縁故者と認めて、相続財産の分与を行うことができるのでしょうか。いわゆる死後縁故の問題であり、特別縁故者と認められ得るかについて、何時の時点での被相続人との縁故関係が必要かということが問題となります。

2 死後のみの縁故の場合

被相続人との縁故がその死後のみに限られている場合、特別縁故関係が認められ得るかが問題となります。
被相続人の生前はほとんど交流がなかったにもかかわらず、他に親戚がいなかったため、被相続人の死後に、葬儀や祭祀法事を執り行ったり、遺産を管理していたような場合に問題となり得ます。

この問題については、概ねに否定的に、つまり特別縁故者にはあたらないと解されているのが現在の実務の取扱いであると思います。
否定する理論的な根拠は、以下の裁判例に現れているところです。

鹿児島家審昭和45年1月20日家月22巻8号78頁(判例タイムズ256号292頁)
「民法958条の3の規定によれば、被相続人の相続財産を分与される資格ある者として掲げるところは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者に限られ、その例示内容からみて、被相続人の生前において、被相続人と特別の縁故関係にあつた者に限定する趣旨と解するのが相当であるから、申立人・・・が被相続人の死後葬儀、供養を行なった事実があっても、その事実は、生前の特別縁故関係の存否又は程度を推測させる事情となりうるに止り、それ自体は特別縁故性を具有するものではないといわなければならない。」

死後のみの縁故の場合には特別縁故者であることを否定する考え方からは、特別縁故者となる者は、被相続人の死亡時に生まれている必要があるという結論が導かれることになります(同時存在の原則)。

3 被相続人の死亡後、葬儀、祭祀法事費用などが支払われた場合の処理

被相続人の死亡後、葬儀、祭祀法事費用などが支払われた場合の処理については、相続財産管理人の選任後、家庭裁判所が相続財産管理人の申立により、権限外行為許可審判を出して支払いがなされるという処理がされるのが通常です。支払われるべき遺産が残っており、葬儀、祭祀法事の内容や費用に合理性が認められる場合は、ほぼ支払いが認められていると思います。
この場合、葬儀、祭祀法事費用などを支出した人が、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任申立をする必要がある場合も多いと思います。

4 死後縁故に加えて生前の縁故関係もあった場合

被相続人とその生前に縁故関係があった者に関する被相続人との死後の縁故については、その生前の縁故と死後の縁故も合わせて考慮し、死後の縁故を特別縁故関係肯定の考慮事由とすることは差し支えないとされています。

大阪高等裁判所平成31年2月15日決定(判例時報2431・2432号97頁・判例タイムズ1470号89頁)は、
「被相続人の相続財産の相応の部分が抗告人による経済的援助を原資としていることに加え、被相続人の死亡前後を通じての抗告人の貢献の期間、程度に照らすならば、抗告人は、親兄弟にも匹敵するほどに、被相続人を経済的に支えた上、同人の安定した生活と死後縁故に尽くしたということができる。したがって、抗告人は、被相続人の療養看護に努め、被相続人と特別の縁故があった者(民法958条の3第1項)に該当するというべきである。」
として、死後縁故も特別縁故者該当性の判断要素としています。

大阪高等裁判所平成20年10月24日決定(家庭裁判月報61巻6号99頁)は、
「親身になって被相続人の療養看護や財産管理に尽くした上、相当額の費用を負担して、被相続人の葬儀を主宰したり、その供養も行っているものである。」
と認定したうえ、
「このような関係をみると、・・・被相続人と通常の親族としての交際ないし成年後見人の一般的職務の程度を超える親しい関係にあり、被相続人からも信頼を寄せられていたものと評価することができるから、民法958条の3所定の、いわゆる特別縁故者に該当するものと認めるのが相当である。」
とし、
療養看護上及び財産管理上の貢献並びに被相続人の死後の供養については、これらを十分斟酌した上で、上記のとおり分与額を定めるのが相当というべき」
との判断をしています。
つまり、死後縁故については、特別縁故者該当性と分与額に影響を及ぼすものとしています。

以上のことからすると、生前と死後の両方の縁故があった人は、生前の縁故のみでなく、死後の縁故もあわせ主張すべきであり、それによって特別縁故者にとって適切な分与額が認められるということになり得ると言えます。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

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