コラム | 東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

03‐3221‐3335

業務時間 9:00~17:30(平日)

(ご予約で)夜間・土日休日も相談対応可能

お問い合わせ
コラム画像

コラム

相続放棄と被相続人の死亡による損害賠償請求

相続放棄・限定承認

1 相続放棄をした妻による夫の死亡についての損害賠償請求

夫を交通事故でなくしたが、夫には多額の借金があったので妻が相続放棄をしたという場合、妻が夫の死亡についての損害賠償をすることができるかという問題があります。
遺族の損害賠償請求権の法的構成については被害者の損害倍請求権を相続により取得したと考えるのが一般的です。
したがって、相続放棄をした妻は、相続を放棄をしている以上、夫の損害賠償請求権を相続によって取得することはできません

2 扶養利益の喪失(侵害)

しかし、裁判例には、夫の損害賠償請求権の相続という構成ではなく、扶養利益の喪失(侵害)という概念を用いて、夫の逸失利益のうちの一定部分を、妻の扶養利益の喪失として請求することを認めているものがあります。
横浜地判平成25年5月27日・交通民集46巻3号667頁は、
交通事故により死亡した被害者(54歳の男性会社員)の相続放棄をした妻について、固有の損害として、扶養による利益を喪失したことが認められ、被害者と妻の収入や生活状況に照らすと、被害者の妻の扶養逸失利益は被害者の逸失利益の40パーセントに相当する額であると判断しています。

3 内縁配偶者に関する判例

上記の相続放棄した事案で扶養利益の喪失を認めた裁判例は、死亡した被害者の内縁配偶者(相続人ではない)に扶養利益の喪失を認めた最高裁の判例(最高裁判所平成5年4月6日判決・民集47巻6号4505頁)と同様の考え方に基づくものです。
最高裁判所平成5年4月6日判決・最高裁判所民事判例集47巻6号4505頁は、
「内縁の配偶者が他方の配偶者の扶養を受けている場合において、その他方の配偶者が保有者の自動車の運行によって死亡したときは、内縁の配偶者は、自己が他方の配偶者から受けることができた将来の扶養利益の喪失を損害として、保有者に対してその賠償を請求することができるものというべきである」
としています。
この最高裁判所の判例は、遺族の損害賠償請求権の法的構成について、相続説と扶養利益喪失(侵害)説があるところ、内縁の配偶者の扶養利益喪失による損害賠償請求を最高裁判所としてこれを認めた点に意味があるとされています。

4 認められる扶養利益の喪失(侵害)による損害額

扶養利益の喪失(侵害)による損害は、扶養が被害者の収入からされるものである点に鑑み、被害者の逸失利益の中から認められることになります。したがって、相続構成の場合と異なり、逸失利益、慰謝料、その他の損害を全て合計したものについて認められるということにはなりません。
また、認められる額は、扶養の実態によってケースバイケースになると思われます。
必ずしも被害者の逸失利益全額には及ぶものではない点が、相続構成の場合と異なる点です。
扶養の実態についての主張・立証が重要になってきます。

5 慰謝料について

慰謝料については、死亡の場合、本人分と近親者固有の分とが認められますが、後者については本人分を相続するという構成をとらないため、相続放棄をしていても認められる可能性があります。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

その他のコラム

中小企業の経営権の承継と遺産分割方法の選択

事業承継

1 中小企業における株式の共同相続 中小規模の同族会社においては、会社の安定的な経営のため、遺産に株式がある場合、相続による株式の分散をできるだけ避けることが望ましいといえます。 共同相続の効力については、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条)とされています(株式の場合は所有権以外の財産であるため正確には準共有ですが(民法第264条)、以下、単に共有と...

続きを読む

異順位の相続資格重複が認められる場合の先順位相続資格喪失による他の相続資格への影響

相続人の範囲と調査

1 異順位の相続資格重複の場合 異順位の相続資格が重複する場合は、重複する資格を同時に主張することはできないため、先順位の相続資格のみ認められます。 そこで、先順位の相続資格において相続資格を喪失した場合(相続欠格、廃除、放棄)に、後順位の資格で相続ができるかが問題となります。 A、B、X3人の兄弟姉妹のうち、AとXが養子縁組をした場合、Aの相続に関して、Xは、養子としての相続資...

続きを読む

相続の承認・放棄の熟慮期間はいつから起算されるか

相続放棄・限定承認

1 相続の承認・放棄の熟慮期間 民法第915条第1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定しています。 他方で、同法第921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」とし、同条2号では「相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった...

続きを読む

共有不動産の分割方法~遺産共有の場合と夫婦共有の場合~

遺産分割

1 共有物分割請求 民法第258条は、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」としています。 遺産分割前の相続人間で共有状態にある不動産や夫婦が婚姻中に取得した共有名義の不動産を分割したい場合、この方法によることができるでしょうか。   2 遺産共有の場合 相続の場面で、遺産分割前の遺産共有の場合には、共有物分割請求が...

続きを読む

弁護士歴20年以上積み上げてきた経験実績
依頼者お一人お一人とじっくり向き合い、ていねいな説明
きめ細やかな対応が強みです