特別縁故者に対する相続財産分与の申立時期(1) |東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

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特別縁故者に対する相続財産分与の申立時期(1)

特別縁故者に対する相続財産の分与

特別縁故者に対する相続財産分与制度の概要についてはこちらを参照

 

1 相続人捜索の公告期間満了後、3か月以内

特別縁故者に対する相続財産分与の申立は、民法958条の相続人の捜索の公告期間の満了後3か月以内にしなければなりません(民法第958条の3第2項)。
このような規定があるものの、実際に相続人捜索の公告期間については、相続財産管理人選任からかなり時間が経過してから到来することや、いつからその期間が始まって満了するのかがわかりにくいので、うっかりすると申立の時期を逃してしまう危険もあるという問題があります。

2 相続財産管理事件における手続の流れ

(1)官報公告の重要性
特別縁故者に対する相続財産分与は相続財産管理事件の中で行われますので、相続財産管理事件の手続の流れをしっかり把握しておくことが必要です。
そして、相続財産管理事件における手続において時間的な経過の節目となるのは官報公告ですので、どのような官報公告がいつ行われるかを押さえておくことが重要です。

(2)相続財産管理人の選任審判と選任の官報公告
相続財産管理人選任の申立がなされ、相続財産管理人選任の審判がなされると、家庭裁判所は職権で相続財産管理人選任の官報公告を行います(民法第952条第2項、下図の官報公告①)。
相続財産管理人選任申立がされてからこの官報公告がなされるまでどれくらいの期間を要するかは、申立時に必要な書類がきちんと揃っているかなどの事情によりケースバイケースですが、私の経験からすると、1か月半~6か月程度の期間を要するのが通常であると思われます。
この官報公告は、相続財産管理人が選任されたことを家庭裁判所が官報で公告するものですが、第1回目の相続人捜索の意味も含んでいます。

(3)相続債権者・受遺者に対する請求の申出の公告・催告
相続財産管理人選任の官報公告(下図の官報公告①)掲載の日の翌日から2か月を経過しても相続人のいることが明らかにならなかったときは、相続財産管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者と受遺者に対して、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならず、その期間は2か月を下ることができないとされています(民法第957条第1項、下図の官報公告②)。
この官報公告は、家庭裁判所の職権によってではなく、相続財産管理人によって行われます。また、期間は実務上は2か月とされています。
また、この官報公告は、第2回目の相続人捜索の意味を持ちます。
あわせて、相続財産管理人は、知れている(既に判明している)相続債権者と受遺者に対しては、個別に請求の申出の催告をしなければなりません(民法第957条第2項、第927条第3項)。

(4)債権者・受遺者への弁済
相続債権者・受遺者に対する請求の申出の公告期間が満了すると、相続債権者と受遺者が確定します。
期間経過後、法の規定(民法第957条、第928条乃至第935条)にしたがって、相続債権者と受遺者に対する弁済が行われます。
相続財産が債務超過の場合は、相続債権者・受遺者に対する配当弁済を行った後、相続財産管理人選任処分の取消(選任処分取消の審判)が行われ、相続財産管理事件は終了し、特別縁故者に対する相続財産分与の機会は訪れません。
相続財産が債務超過とならない場合は、次の、相続人捜索の公告手続に入ります。

 

(5)相続人捜索の公告申立と官報公告
相続債権者・受遺者に対する請求の申出の公告(上図の官報公告②)期間が満了してもなお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続人捜索の公告(相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨の公告)をしなければなりません(民法第958条、下図の官報公告③)。
第3回目の相続人捜索の官報公告となります。
この官報公告は、相続財産管理人または検察官(通常は相続財産管理人)が家庭裁判所に相続人捜索の公告の申立をすることによって行われますが(民法第958条)、東京家庭裁判所の運用では、相続人捜索の公告申立は相続財産管理人選任審判から7か月以内に行うべきとされています。
相続人捜索の公告期間6か月以上の期間とされていますが(民法第958条)、実務上は6か月とされていることがほとんであると思います。
相続人捜索の公告期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人や相続財産管理人が知らなかった相続債権者・受遺者は、その権利を失うことになります。

(6)特別縁故者に対する相続財産の分与申立期間
相続人捜索の公告期間の満了の日の翌日から3か月間が、特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間となります(民法第958条の3第2項)。


3 申立時期を把握するための留意点
ここまでたどり着くのには、今までの説明からもわかりますように、相続財産管理人選任審判から1年以上の時間を要します。また、相続財産管理事件が始まった当初から期間が確定しているわけではなく、途中行われる官報公告の時期によって期間が前後します。
常に官報を確認するということも事実上難しいと思います。
そこで、特別縁故者に対する相続財産分与の申立を予定している場合は、家庭裁判所や相続財産管理人に対して、上記の各官報公告の時期、もっと端的に言えば、特別縁故者に対する相続財産分与の申立時期を適宜問い合わせ、確認することによって、申立の時期を失念することのないように事前に準備をしておくのが望ましいといえます。通常は、相続財産管理人に問い合わせると、相続財産管理業務や官報公告の進捗状況等について回答してくれると思います。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

監修

菅野綜合法律事務所

弁護士 菅野光明第二東京弁護士会所属

弁護士歴20年超える経験の中で、遺産分割、遺言、遺留分、相続放棄、特別縁故者に対する相続財産分与など相続関係、財産管理、事業承継など多数の案件に携わってきた。事案に応じたオーダーメイドのていねいな対応で、個々の案件ごとの最適な解決を目指す。

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