特別縁故者に対する相続財産分与の申立時期(2) |東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

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特別縁故者に対する相続財産分与の申立時期(2)

特別縁故者に対する相続財産の分与

特別縁故者に対する相続財産分与制度の概要についてはこちらを参照

 

1 申立時期は、相続人捜索の公告期間満了後、3か月以内

特別縁故者に対する相続財産分与の申立は、民法第958条の相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内にしなければなりません(民法第958条の3第2項)。
以下のような時期・場面での申立の適法性が問題となります。

2 相続人捜索の公告期間満了前の申立

民法第958条の相続人捜索の公告期間満了前に申立がされた場合は、特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間を定めている民法第958条の3第2項の規定に反する不適法な申立とならざるを得ません。
しかし、申立がされた後、相続人捜索の公告期間が経過して満了し、相続人が現れなかったときは、適法な申立として取り扱われるべきであると考えられています。

大阪家庭裁判所昭和40年11月25日審判(家裁月報18巻6号173頁)は、
「民法第958条の3第2項は、相続財産分与請求は相続権主張催告の公告期間が満了したときを始期とし、それから三ヵ月までにしなければならない旨を規定するから、上記催告期間の満了前にした請求は同法にてらし形式上瑕疵ある申立といわざるをえない」
としながらも、
「かかる申立といえども上記催告期間が満了しなお相続権を主張する者が現れない場合はその瑕疵が治癒され適法な申立に転化するものと解すべき」
としています。

3 申立期間(相続人捜索の公告期間満了後、3か月以内)経過後の申立

民法第958条の3第2項所定の申立期間(相続人捜索の公告期間満了後、3か月以内)経過後の申立は、相続人捜索の公告期間満了前の申立のように瑕疵が治癒されるということもないため、不適法な申立となります。
申立が任意に取り下げられない場合は、家庭裁判所は申立を却下することになります。

福岡高等裁判所平成16年12月28日決定(家裁月報57巻11号49頁)は、
申立期間(民法第958条の公告期間満了後、3か月以内)経過後にされた相続財産分与の申立は、申立人が被相続人の特別縁故者である旨を主張して相続財産管理人の選任を申し立てていた場合であっても、不適法であるとしています。

なお、大阪高等裁判所平成5年2月9日決定(家裁月報46巻7号47頁)は、
申立人が複数の場合は各申立人ごとに申立の適法要件を個別に判断すべきであって、一部の申立人の申立が期間内の適法なものであっても、他の申立人の申立が期間経過後のものであればその申立は不適法であるとして、期間満了から4か月遅れた申立を却下した原審判を相当としています。

したがって、特別縁故者に対する相続財産分与の申立を予定している場合は、家庭裁判所や相続財産管理人に対して、上記の各官報公告の時期、もっと端的に言えば、特別縁故者に対する相続財産分与の申立時期を適宜問い合わせ、確認することによって、申立の時期を失念することのないように事前に準備をしておくのが望ましいといえます。

4 相続人捜索の公告期間内に申出をした相続人の相続権の存否が争われている場合

相続人捜索の公告期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人や相続財産管理人が知らなかった相続債権者・受遺者は、その権利を失うことになり、特別縁故者に対する相続財産の分与の手続に入っていくこととなり、相続人捜索の公告期間の満了の日の翌日から3か月間が、特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間となります。
相続人捜索の公告期間内に申出をした相続人の相続権の存否が争われている場合、殊に権利を主張した相続人が敗訴し、その時点で既に申立期間が経過していたような場合はどのように取り扱うかが問題となります。

この点についての実務の取扱いは、特別縁故者に対する相続財産分与の制度が、相続人の不存在が確定していることを前提としているものであることに鑑み、相続権が争われている限りは未だ相続人の不存在が確定していないため、相続人捜索の公告期間が満了しても申立期間は進行せず、相続人の不存在が確定した時から申立期間の進行が開始するとされています。

大阪高等裁判所平成9年5月6日決定(判例時報1616号73頁)は、
相続財産分与申立がされた当時、相続権の存否に関する訴訟が係属中で法律関係が確定していなかった事案で、
「本件相続財産分与申立てがされた当時、上記法律関係が未確定であった以上、特別縁故者に対する相続財産分与申立期間は進行しない。」
としています。

神戸家庭裁判所昭和51年4月24日審判(判例時報822号17頁)は、
「民法958条の3第2項の趣旨は、分与制度の本質から考えて、分与の申立は相続人の不存在の確定した後なされることを要求しているものと解するのが妥当であるから、本件のように、相続人捜索の公告期間内に相続権の申出を行った自称相続人について相続権の有無が争われている場合には、未だ相続人の不存在は確定していないのであるから、相続人捜索の公告期間が満了しても分与の申立期間は進行せず、相続権の不存在の確定時から全員について3ヶ月の申立期間が進行を開始すると解するのが相当である。」
としています。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

監修

菅野綜合法律事務所

弁護士 菅野光明第二東京弁護士会所属

弁護士歴20年超える経験の中で、遺産分割、遺言、遺留分、相続放棄、特別縁故者に対する相続財産分与など相続関係、財産管理、事業承継など多数の案件に携わってきた。事案に応じたオーダーメイドのていねいな対応で、個々の案件ごとの最適な解決を目指す。

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