コラム | 東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

03‐3221‐3335

業務時間 9:00~17:30(平日)

(ご予約で)夜間・土日休日も相談対応可能

お問い合わせ
コラム画像

コラム

家の所有者が死亡した場合、同居していた相続人は相続開始後も無償で住めるか

不動産の相続

1 契約がないまま無償で同居していた相続人は占有補助者

親の家に無償で同居している場合が少なからずあると思います。
親が生きている間は、その相続人は親の家に無償で住むことができましたが、親と同居している相続人との間には使用貸借の契約などはされていないのが通常であり、そのような相続人の占有は、対外的には独立の占有を認められない親の占有補助者という立場に基づくものとなります。
しかし、親が死亡すれば、相続開始と同時に無償使用の根拠となる占有補助者としての資格を失うこととなります。
親と無償で同居していた相続人が、相続が開始した後も、遺産である不動産にそのまま住み続けていることはよくあります。
しかし、相続開始後は、親と同居していた相続人が住み続けている遺産である不動産は、遺産分割が終了するまでは他の相続人との共有関係にあることからから、相続開始後も無償で住み続けることができるか、共有持分を超えた部分の賃料相当額について不当利得が発生しないかが問題となります。

2 遺産分割が終了するまで無償で住み続けることができる

この問題については、最高裁判所の以下の判例があります。
最高裁判所平成8年12月17日判決(民集50巻10号2778頁)
「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。」

この最高裁判所の判決は、同居の相続人は被相続人との間で同居の家屋を目的とする使用貸借契約を締結したもので、使用貸借契約成立の時期は相続開始前、始期を相続開始時終期を遺産分割時とするものと推認される旨判示しています。

そして、その理由としているところは、以下のとおりです。
「建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」

上記の最高裁判所判決原審である東京高等裁判所平成5年7月14日判決(民集50巻10号2817頁、家裁月報49巻5号67頁)は、次のように判示していました。
「自己の持分に相当する範囲を超えて本件不動産全部を占有、使用する持分権者は、これを占有、使用していない他の持分権者の損失の下に法律上の原因なく利益を得ているのであるから、格別の合意のない限り、他の持分権者に対して、共有物の賃料相当額に依拠して算出された金額について不当利得返還義務を負う」

これに対して、上記の最高裁判決は、被相続人と同居していた相続人の地位の根拠を、共有持分権ではなく、同居の相続人に使用権原を与えるという被相続人と同居の相続人の通常の意思に求めています。
したがって、共有持分権に基づく妨害排除の明渡しの問題も生じないことになります。
もっとも、使用貸借契約に関する債務不履行があって使用貸借契約が解除され、明渡請求がされることはあり得ます。

4 同居の相続人が配偶者の場合(配偶者短期居住権の制度の新設)

同居の相続人が配偶者の場合においても上記の最高裁判所の判例によっても保護されていましたが、平成30年の民法改正により一定の要件を満たせば法律上当然に配偶者短期居住権を取得することとなる制度が創設されました(民法第1037条)。
この制度は令和2年4月1日から施行されており、同日以降に開始された相続に適用されます。
上記の最高裁判所の判例による保護との違いは、被相続人が居住建物を第三者に遺贈した場合や被相続人が反対の意思を表示した場合でも、最低6か月間は配偶者の無償での居住権が認められる点にあります。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

その他のコラム

中小企業の経営権の承継と遺産分割方法の選択

事業承継

1 中小企業における株式の共同相続 中小規模の同族会社においては、会社の安定的な経営のため、遺産に株式がある場合、相続による株式の分散をできるだけ避けることが望ましいといえます。 共同相続の効力については、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条)とされています(株式の場合は所有権以外の財産であるため正確には準共有ですが(民法第264条)、以下、単に共有と...

続きを読む

異順位の相続資格重複が認められる場合の先順位相続資格喪失による他の相続資格への影響

相続人の範囲と調査

1 異順位の相続資格重複の場合 異順位の相続資格が重複する場合は、重複する資格を同時に主張することはできないため、先順位の相続資格のみ認められます。 そこで、先順位の相続資格において相続資格を喪失した場合(相続欠格、廃除、放棄)に、後順位の資格で相続ができるかが問題となります。 A、B、X3人の兄弟姉妹のうち、AとXが養子縁組をした場合、Aの相続に関して、Xは、養子としての相続資...

続きを読む

相続の承認・放棄の熟慮期間はいつから起算されるか

相続放棄・限定承認

1 相続の承認・放棄の熟慮期間 民法第915条第1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定しています。 他方で、同法第921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」とし、同条2号では「相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった...

続きを読む

共有不動産の分割方法~遺産共有の場合と夫婦共有の場合~

遺産分割

1 共有物分割請求 民法第258条は、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」としています。 遺産分割前の相続人間で共有状態にある不動産や夫婦が婚姻中に取得した共有名義の不動産を分割したい場合、この方法によることができるでしょうか。   2 遺産共有の場合 相続の場面で、遺産分割前の遺産共有の場合には、共有物分割請求が...

続きを読む

弁護士歴20年以上積み上げてきた経験実績
依頼者お一人お一人とじっくり向き合い、ていねいな説明
きめ細やかな対応が強みです