特別縁故者に対する相続財産の分与を受けたときの課税 |東京都千代田区の相続弁護士 菅野光明

03‐3221‐3335

業務時間 9:00~17:30(平日)

(ご予約で)夜間・土日休日も相談対応可能

お問い合わせ
コラム画像

コラム

特別縁故者に対する相続財産の分与を受けたときの課税

特別縁故者に対する相続財産の分与

特別縁故者に対する相続財産分与制度の概要についてはこちらを参照

 

1 遺贈により財産を取得したものとみなされる

特別縁故者に対する相続財産の分与により相続財産の全部または一部の分与を受けた場合、分与を受けた者は、分与時における分与財産の時価に相当する金額を、被相続人から遺贈により取得したものとみなされます(相続税法第4条第1項)。

相続税法第4条第1項
民法第958条の3第1項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす。

2 相続税の申告が必要となる場合は分与を受けることとなったことを知った日の翌日から10か月以内にしなければならない

特別縁故者に対する相続財産の分与については、上記のとおり被相続人からの遺贈により分与財産の時価に相当する金額を取得したものとみなされるため、分与額によっては相続税の申告が必要となります。
申告が必要な場合の申告期限は、通常は、特別縁故者に対する相続財産分与の審判が確定し分与を受けたことを知った日の翌日から10か月以内ということになると思います。

相続税法第29条第1項
第4条第1項又は第2項に規定する事由が生じたため新たに第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、同項の規定にかかわらず、当該事由が生じたことを知った日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第117条第2項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

3 相続税に関する留意点

(1)分与を受けた財産の評価は分与時の時価(相続税評価額)による
特別縁故者に対する相続財産の分与により相続財産の全部または一部の分与を受けた場合、分与を受けた者は、分与時における分与財産の時価に相当する金額を、被相続人から遺贈により取得したものとみなされることから、分与を受けた財産(例えば、土地などの不動産)は、相続開始時ではなく、分与時における時価(相続税評価額)で評価します。

(2)負担した債務や葬式費用の控除
特別縁故者が被相続人の未払いの入院費用や葬儀費用を支払っている場合も少なくないと思います。
このような場合で、これらの費用を別途相続財産から受け取っていない場合は、分与財産の金額からこれらの費用を控除した価額をもって分与された財産の価額として扱われます(相続税基本通達4-3)。
もっとも、これらの費用については、特別縁故者に対する相続財産の分与がなされる前に、相続財産管理人が家庭裁判所から権限外行為許可を受けたうえで、相続財産管理人から支払われるのが通常です。

(3)相続開始前3年以内に贈与を受けている場合は加算がされる
特別縁故者に対する相続財産の分与により分与を受けた者が、被相続人から生前贈与を受けている場合、その受けた相続開始前3年以内の贈与も相続財産に加算して相続税の計算が行われます(相続税基本通達4-4)。

(4)基礎控除額
被相続人には相続人がいないため、基礎控除額は、相続開始の日が平成27年1月1日以後の場合3000万円となります(それ以前に相続が開始した場合は5000万円)。
なお、相続財産管理手続に被相続人が死亡してから相当期間を要し、家庭裁判所から相続財産の分与を受けた時点で法改正によって相続開始時と相続税法が異なっている場合は、相続開始時の相続税法の規定が適用されます(相続税法第27条)。

(5)相続税額の2割加算
特別縁故者に対する相続財産の分与を受けた者は、被相続人から相続・遺贈により財産を取得した被相続人の一親等の血族(父母、子)や配偶者に該当しないため、相続税の2割加算の対象となります。

4 内縁配偶者が特別縁故者として相続財産の分与を受けた場合における配偶者相続の場合との比較における税務上のデメリット

(1)基礎控除額が異なる
内縁配偶者は相続人の数に算入されないため、基礎控除額がその分だけ少なくなります。
相続開始が平成26年12月31日以前の場合
基礎控除額 5000万円+1000万円×法定相続人の数
相続開始が平成27年1月1日以後の場合
基礎控除額 3000万円+600万円×法定相続人の数

(2)配偶者に対する相続税額の軽減の適用がない
配偶者は、相続財産の2分の1まで、または1億6000万円までの相続財産を取得した場合には相続税が課税されませんが、内縁配偶者が特別縁故者として相続財産の分与を受けた場合には配偶者に対する相続税額の軽減の適用がありません。

(3)相続税額の2割加算
上記で述べたとおり、相続税額が2割加算されます。

(4)障害者控除の適用がない
相続人であることが適用要件とされているため、内縁配偶者が特別縁故者として相続財産の分与を受けた場合には適用がありません。

(5)相次相続控除の適用がない
相続人であることが適用要件とされているため、内縁配偶者が特別縁故者として相続財産の分与を受けた場合には適用がありません。

(6)小規模宅地等の特例の適用がない
被相続人の親族であることが適用要件とされているため、内縁配偶者が特別縁故者として相続財産の分与を受けた場合には適用がありません。

【菅野綜合法律事務所 弁護士菅野光明】

監修

菅野綜合法律事務所

弁護士 菅野光明第二東京弁護士会所属

弁護士歴20年超える経験の中で、遺産分割、遺言、遺留分、相続放棄、特別縁故者に対する相続財産分与など相続関係、財産管理、事業承継など多数の案件に携わってきた。事案に応じたオーダーメイドのていねいな対応で、個々の案件ごとの最適な解決を目指す。

その他のコラム

相続人が海外居住者である場合の印鑑証明書等相続手続に必要な書類

遺産分割

続きを読む

中小企業の経営権の承継と遺産分割方法の選択

事業承継

続きを読む

異順位の相続資格重複~先順位の相続資格喪失による影響

相続人の範囲と調査

続きを読む

相続の承認・放棄の熟慮期間はいつから起算されるか

相続放棄・限定承認

続きを読む

弁護士歴20年以上積み上げてきた経験実績
依頼者お一人お一人とじっくり向き合い、ていねいな説明
きめ細やかな対応が強みです